隠居たるもの、賽(さい)の目に合わせて出方を探る。年始早々、この省察で「今年のテーマは『TUMBLING DICE』、そう『ダイスを転がせ!』なのだ!」と多少なりとも鼻息荒く宣したのを覚えておいでだろうか。言わずと知れたThe Rolling Stonesの名曲が元ネタだ。虎視眈々と好機をうかがって、「えいや」とばかり賽を投げ、夏あたりにいったんの顛末を吟味して、それに合わせて再び賽を投げる、年の終わりには「脱皮した身体」に合わせた「新しい服」ができあがる。そんな風に考えていたところ、こちらが賽を投げる前に新たなプレイヤーが横から入ってきて、そいつがダイスを転がしちゃった。仕方あるまい、一筋縄でいかないプレイヤーが出した目に合わせて、獲物をねらって鋭く見下ろす虎よろしく、ダイスが手元に回ってくるのを待っている。

まずは「ステイホーム」の“目”に合わせる

それにしても、年明け早々に現れた新たなプレイヤーが出した“目”は強烈だった。それなのに、欲深い威張りんぼはタカをくくって出た“目”を顧みることも、それに合わせて手を打つこともろくすっぽしなかった。だから当然のことにこじらせてしまう。「風邪ひいたかな?」と感じたときが肝心なのだ。今年のこちとらのゲームは「山の家プロジェクト」を中心に展開されるはずで、しかも春からが本番、ダイスに手を伸ばそうとしていた矢先のことだった。それなのに、暑さ寒さも彼岸までのあたりで東京オリンピック延期が決まった途端なにもかもがストップ、まったくもってはた迷惑な話であった。だからといって迷惑をこうむっているのはこちとらに限ったことではないからもろもろ致し方ない。いささか頓挫はしているものの、幸いにも“ゲーム”自体がなくなったわけでもなく、賽を投げる順番が先に延びただけのこと。それではその間ボウっと手をこまねいているのかというと、いまだ隠居にたどり着いていない我が身、落ち着きなくそんな枯淡の境地にまだまだ手が届かない。「ステイホーム」だからこそできること、それを探して少しずつ取り組んでいる。

大それたこと、すなわち本棚の整理・模様替えに着手した

「なんて大それたことを始めてしまったことか」と後悔したところで、いつかは取り組まなければならなかったのだ。山の家に導入するため取り寄せたネットワークオーディオプレイヤーを稼働させ、インターネットが配信する音楽を聴きながら、隅から隅までの本棚の整理・模様替えに着手した。いつの間にか乱雑に積まれるばかりとなって久しいこの棚、うっとり悦に浸れるような整頓がかねてより要請されていた。すべてを棚から下ろし関連を考慮しながら並べ替え、購入したまま、あるいはもらったまま読まずに奥にしまいこまれたもの、山の家に置いた方がふさわしいものを洗い出す。そして山に持って行きたいものは別途まとめる。レコードはもちろんのこと、範囲は書籍に限らずDVDにも及ぶ。先日、創設メンバーの一人 フロリアン・シュナイダーが亡くなったクラフトワークのDVDなんて山の中で間違いなくハマる。このディスクに収められたライブの頃、フロリアンはまだ在籍していたし。講談社文庫の柳家小三治「まくら」など、あるはずのものが見当たらないこともいくらかあった。あげちゃったか貸したまま戻ることがなかったのだろう。「まくら」は山の家の慰みのために買い直そうか…。もう少しですべて片づきそうだ。今後まずもって必要なさそうなものは処分することにした。

「もうすぐ隠居」と宣して早一年

今こちらに置いているあらゆる“もの”のうち、5分の1くらいを持っていくことになろうか。処分するものと合わせると4分の1くらいの“もの”のスペースが空くことになろうか。自分で言ってりゃあ世話ないが、「働き者」の癖が抜けなくて、賽の目に合わせてついつい働いてしまう。だけどもね、身綺麗になったようでさっぱりした心持ちだ。5月に入って「山の家プロジェクト」は再開し動き出している。それに合わせて長野県の非常事態も解除された。

昨年の誕生日を機に始めたこの省察である。明後日がその誕生日であるから、これをもって丸1年が終わる。今年は閏年だったから今日で365日目、総数149段、2年目は150段目から始まります。よろしくどうぞ。ああ、もうすぐ隠居の身。そろそろ賽を投げる番が回ってくる。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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