隠居たるもの、野生の呼び声に身を任す。昨晩、久しぶりにレッド・ツェッペリンのライブ映像を楽しんだ。彼らが作品をリリースしていたアトランティック・レコードの創始者アーメット・アーディガンを追悼し没後1年に際して行われたチャリティーライブ、2007年12月10日、ロンドンにおける一夜限りの再結成、それから5年後に「祭典の日(原題:Celebration Day)」として作品化された凄まじいライブだ。結婚したばかりの高城剛と沢尻エリカも観に行っていて、当時ブイブイのエリカ様がワイドショーで尊大にコメントされていたのを微笑ましく想い出す。ではなぜ昨晩にこれを選択したのかというと、実はレッド・ツェッペリンを好むつれあいのご機嫌をとるためであった。

つれあいは Led Zeppelin に身を委ねる

つれあいを知る人からすれば、彼女とレッド・ツェッペリンはどうにも結びつかない。私と暮らすようになってあちこち引っ張り回されて、「門前の小僧習わぬ経を読」み様々な音楽と接する機会を持ったが、さすがにハードなロックになびくことはそうそうになかった。その時、彼女はクサクサしていたのだ。いや、プンプンといった方がより的確だろうか。今から7年前のこと、日頃から穏やかな彼女が、そんなことは滅多にないのにある出来事に腹を据えかねていて、それこそが“ハマる”きっかけとなる。今は亡き親父が夕飯を終えてゆっくりと寝床に赴く。怒りの対象が自分ではないことを幸いに、「うんうん」と話を聴きながら私は晩酌の杯を重ねた。BGMをと思い、WOWOWの放送から録画しておいた「祭典の日」を流す。すると、彼女の話は途切れがちになる。身体性に訴えかけるレッド・ツェッペリンの激しいグルーヴに魅了されたのだ。

Led Zeppelin が呼びかける野生の身体性

なんといってもくどいくらいに反復するジミー・ペイジのリフレイン。野生からの呼びかけのごときロバート・プラントのシャウト。ジョン・ポール・ジョーンズは饒舌に音を満たしてリフレインを補完し、亡き父親譲りのジェイソン・ボーナムのドラムが核となる推進力を発揮する。つれあい曰く、彼らのグルーヴに否応なく「身体」が反応し没入することで、グルグルと渦巻いていた頭の中が空っぽになり、その結果スッキリとリセットされる、のだそうだ。ブルースを基調に置く彼らのグルーヴにたゆたうことは私にとっても好ましい。しばらくの間、私たちはことあるごとに「祭典の日」を観た。おかげさまで、2014年から始まったジミー・ペイジの最新リマスターで全アルバムをそろえることに、そこはかとない後ろめたさを感じる必要がなくなった。そうこうしているうち、blu-rayレコーダーから「祭典の日」は消えてしまうのだが、それをディスクに落としたのか、そうだとしたらどこにしまったのか、すっかり忘れてしまった。

なぜLed Zeppelinに登場を願ったのか

WOWOWに「W座からの招待状」という「小山薫堂×信濃八太郎のタッグでお届けする“今、もっとも観て欲しい映画との出会い”」という触れ込みの映画番組がある。八太郎の役回りを、今は亡きイラストレーター安西水丸が務めていた頃から長く観続けている。突然に亡くなる直前の彼と近くの酒場「山利喜」で鉢合わせ、「いつも楽しみに観てますよ」などとお話しさせてもらったこともあったっけ…。その「W座からの招待状」が以前ほどに面白くない。「これを観て欲しいの?」と首を傾げることも多い。制作が電通だもんで、「彼らのことだから調子に乗って質より『つきあい』を重視し始めたのだろうかねえ」などと勘ぐっていたところ、誰とは言わないけれどいわゆる“大物俳優”が監督出演した一昨日に観た今回のが酷かった。プロットを重視するあまりに人物が過度に卑小で観るに耐えない。よっぽどこたえたのか、つれあいはへそを曲げる。この次に選択する映画が続けて酷かったら取り返しのつかないことになる、ここは思案のしどころだ…。

カオスの棚の中から

馴染みにしている本屋さんが2軒あり、両店とも「キャッシュレス5%還元」の対象業者だった。「この際だ、ちょっと値が張るやつを調達しておこう」とさもしい考えをおこしたのがいけない。本屋さんをゆっくり回るのも4ヶ月ぶりだったし、熱狂に飲み込まれ見境をなくして6月最後の1週間でなんと26冊もの本を購入してしまう。「サイコロの目の出方次第さ、棚に上げたり下ろしたり。」(https://inkyo-soon.com/tumbling-dice-2/)で意気揚々と整理整頓を始めた本棚もあっという間にカオスに飲み込まれ、見て見ぬふりするため片付けから遠ざかる。昨日「いつまでもこうはしていられない」と重い腰をあげ、整理されないまま奥に押しやられていたディスク類をあらためた。あ、ここにあったんだ、「祭典の日」…。そうレッド・ツェッペリンだ、この淀んだ空気を一掃できるのはレッド・ツェッペリンだ。

つれあいは Led Zeppelin に耽溺する

あらためて観ると、当時のジミー・ペイジは63歳、ジョン・ポール・ジョーンズは61歳、ロバート・プラントは59歳。若作りもしていなければ、アンチ・エイジングに躍起になっている風情もない。むしろそのまんまなのがカッコいい。そして相変わらず凄い。1968年にデビューしたレッド・ツェッペリンは、ドラマーのジョン・ボーナムを事故で失い、1980年12月に解散する。余人の模倣を許さない彼なしで「バンドの継続は無理」と判断したからだった。時が経ち彼らがスポットであれ再結成するのは、ジョンの息子、ジェイソン・ボーナムが亡き親父の跡を継いだからだ。アンコール前の本編最後、つれあいが最も好きな曲「Kashimir」の演奏を終えた時、ジミー、ジョン、ロバートのおじさん3人がドラムセットに座るジェイソンに同時に振り向いて、そろってにっこり微笑む光景があまりにも素敵だ。おかげさまで、山の家用にファーストアルバム「Led Zeppelin」のレコードを買い足す許可をいただいた。ああ、もうすぐ隠居の身。「胸いっぱいの愛を」

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

つれあいは Led Zeppelin に耽溺する件のコメント

  1. ツェッペリンとは対照的にメンバーの入れ替わりを繰り返したパープルが再結成した「パーフェクトストレンジャー」
    精神的にギリギリだったマイケル・シェンカーのUFOライブ」
    ハラハラのロックが好きです

    髙橋秀年

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