隠居たるもの、永きにわたり愛し続けるものがあるものだ。みなさんご存知だろう、テレビ朝日系列で放送されている深夜番組「タモリ倶楽部」を。1982年10月にスタートしてから37年目に入ったこの超長寿番組、私にとってはこの番組が、まさしく愛し続けているもののひとつに他ならない。寝ずに日をまたぐことがつらい寄る年波な昨今、深夜にライブで接することももうないが、同番組と「ワールドプロレスリング」だけは録画して必ず見ている。
決め手はタモリ倶楽部
つれあいと出会った23年ほど前、お互いの人となりを探り合う過程で、ふと「どんなTV番組を好むのか」ということが話題にのぼった。「タモリ倶楽部がフェイバリット」で私たちは一致し、「それなら間違いはなかろう」と今に至っている。あまりTVを見ることに執着がない我が家で、現在2人そろって欠かさない番組は「タモリ倶楽部」と「ブラタモリ」。そういうことなのだ。昨日も録画した最新のタモリ倶楽部を見ていた。
「毎度おなじみ流浪の番組」
「今、葛飾区四つ木が在日エチオピア人で熱い」というテーマで、若いコンビ「芸人」と元AKB西野未姫を連れてロケ。エチオピア料理を食べたり、彼の地の風俗文化を紹介したり。最後は、教えられた巻き舌の合いの手「ルルルル…」を嬉々として入れながら、タモリ自らが見事にエチオピアの肩踊りを披露。その場の誰もが破顔一笑して、彼の静かな「ドヤ顔」で番組は終わった。
しかし、前半にはこんなことがあったのだ。進行役の「三四郎」とやらいうコンビの片われが、代表的な郷土料理として紹介されている丸められた食材を、ウケを取ろうとして「そのおしぼりのようなもの」と連呼し、フレンドリーだったエチオピア男性を怒らせ空気を濁してしまっていた。まったく持って失礼で不愉快だった。
FOR THE SOPHISTICATED PEOPLE
「タモリ倶楽部」のサブタイトルである。この人は凝り固まっていないし、未知のものを「馬鹿」にしない。エチオピアの料理を不当に揶揄したりしないし、すぐにそれらしく肩踊りができる。自身がマニアでもあるから、多数者の側に身を置いて少数者を攻撃するという習慣がない。そうして知識を蓄積しながら、「面白がっている」のだ、どんなことも。その様子を見て、誰もが愉快になる。赤塚不二夫の葬儀における弔辞もそうだった。「想いの丈を書状にしたためたのだろう」と思わせておいて、実はただの白紙。期待の裏をかいて、それ以上の弔辞を「気分で」そらんじて面白がっていたに違いない。なんと軽やかなのか。いつまでもお元気でいてほしい。多分、あなたのいないこの国のTVには耐えられそうもない。
ああ、もうすぐ隠居の身。ありあまる時間ができた暁に、せっせと空耳アワーに投書したい。