隠居たるもの、足元つねづね気を配る。2022年2月11日午後3時ごろ、新しい道具がメロン坊やご一行とともに散種荘にやってきた。白馬駅近くにある老舗スポーツ用品店 HAKUBA YAMATOYAのオリジナル長靴である。買い物のついでに立ち寄った前日の2月10日、残念なこと店頭に適したサイズが置いてなかった。なので倉庫にある在庫をあらためて店に持ち寄ってもらい、白馬到着早々のご一行にそれをピックアップしてもらうという算段を立てた。1月末、プラスチックでできたソリを買い求めにこの店を初めて訪れた際、その品揃えに度肝を抜かれた。その余波でインターネットを検索してみると「長靴といえばここのオリジナル長靴」だというのだ。

https://hakubayamatoya.com/goods/

HAKUBA YAMATOYAを知らないってえのはそいつはモグリ

1月25日のことだった。「姪孫のための雪の滑り台」製作に着手した我々は、テストドライブするためにもプラスチック製ソリを必要としていた。常にのぞいているアウトドアショップで物色するもどこにも見当たらない。仕方なしにTHE NORTH FACEで店員さんに聞いてみると、親切にも「駅んとこのヤマトヤさんならあると思います」と教えてくれた。歩いて2分ほどの距離に「へえ、ここにこんな店があったんだ」というYAMATOYAがあった。活気あふれる店内に、メンテナンス用品を含めスキー・スノーボード関連のあらゆる品物が所狭しと並んでいる。恐れ入った。すべてがそろっている。こうしたものをそろえるためにわざわざ神保町に足を運ぶことは今後ないに違いない。しかし考えてみればあたりまえのこと、メッカは一目瞭然にこちらなのだ。この店にこれまで気づかなかったことをつくづく恥じた。

長靴といえばHAKUBA YAMATOYAのオリジナル長靴

恥じ入ると同時になにやら嬉しくなって興奮するのもこれまた人情。余波でインターネットをあれこれ検索し、そこで「オリジナル長靴」がヒットする。雪中を歩く際に重宝するスノーブーツはすでに手元にあるものの、くるぶし少し上くらいの丈のこいつは、たっぷり膝以上に雪が積もった屋外での作業には適さない。だからといって手持ちのペラペラの長靴は、防水ではあっても防寒対策が施されておらず、あまりにも無防備でとてもじゃないが短時間の使用が精一杯。時間をかけて雪かきをしなければならないとき、滑り台を作るために根を詰めたいとき、生ゴム製で内側にキルティングライナーが施され、履き口を絞って雪が入らないようになっている、こんな長靴が必要だと痛感していたのだ。

https://pcmanabu.com/hakuba-yamatoya-boots/このブログにあたった。

「姪孫のための雪の滑り台」は結局のところ「姪のための雪の滑り台」となった

モノがしっかりしているからこのオリジナル長靴は値が張る。「冬の先」が見えてきたからかいくらか割引されていても12,870円した。1年に1度、まとめて作ってシーズンそれっきりなのだそうだ。夫婦同時に使うことも滅多になかろうし、二人の足のサイズ差はなんとか2cmにまとまっているし、大雑把でかまわない長靴がジャストフィットである必要もないから、まずは共用することとして一足だけ買い求めることにした。そして散種荘にやってくるなり履いてみる。荷を解いたご一行と一緒に庭に出て遊ぶ。雪に分け入っても冷たくない。生ゴムだから雪がこびりつかない。なにより丈夫そうで安心だ。

さて、つれあいが手塩にかけて制作した「姪孫のための雪の滑り台」であったが、「こわい…」とメロン坊やはソリに乗ってくれない。どうやら角度をつけすぎてしまったらしい。代わりに普段から仕事に追われる姪夫婦が歓喜の声を上げて楽しんでいた。「おかあさん、がんばれぇ〜」とメロン坊やは応援役に回る。それはそれでいい。

まる店長からお墨付きをもらう

12日はみなで出かけたのだが、13日はメロン坊やご一行だけ親子水いらずでスキー場に出向き、私たち夫婦は洗濯やら掃除やら帰京前の家事に専念した。11時くらいに一段落したので昼まで散策に出る。近くに開店した小さなワッフル屋「まる’sキッチン」を遠回りしながら目指す。もちろん足元はHAKUBA YAMATOYAのオリジナル長靴だ。心底こいつは具合がいい。季節が変わりつつあるのか、暖かいこの日はそこかしこでリスが走り回っていた。

「あなた、その長靴いいんじゃない」とまる店長が寄ってくる。まるという名の彼女はかつて、やはり近くにあるSatoru Coffeeの看板犬だった。その時はアルバイトだったそうだが、看板犬の世界にもこの度「異動」があり、まる’sキッチンの開店に合わせて「店長」へと一足飛びにに栄転したという。まる店長と戯れながら、ご一行のためのテイクアウトとここでコーヒーを飲む私たちの分、いちごとクリームを挟んでちょっとチョコを垂らしたホットワッフル合わせてふたつを、一人で切り盛りする「店員」さんに注文して世間話に興じた。接客を「店員」にバトンタッチしたまる店長は、私たちから離れてまたゆっくりと眠りについた。そしてワッフルが出来上がる。すると驚いたことに、まる店長はおもむろに起き上がりまた職責を果たす。

私たちに手渡されたワッフルをじっと品定めし、振り向いて「店員」と目を合わせ、「Good Job」とばかりにうなずく。そして定位置のひなたに戻ってまた目をつむる。さすが店長である。風もなく穏やかな愉快な晴天だった。つれあいは「自分専用のYAMATOYAの長靴を買おうかなあ」とつぶやいた。ああ、もうすぐ隠居の身。どうやら季節は巡り始めているようだ。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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