隠居たるもの、無用の長物を洗い出す。深川と白馬を行き来する暮らしにもすっかり慣れた今日この頃、季節に応じてどちらを主として考えるべきか、そしてどれくらいのペースで移動を重ねたら快適に過ごせるか、そんなこんなが判然としてきた。それに合わせてこの春から、深川の庵と白馬の散種荘にかかるランニングコストを「目に見える化」し始めている。つれあいがかろうじて仕事を続けている今現在ならいざ知らず、7年もしないうちに二人はそろって年金生活者になる。実際にどれくらいのコストがかかっているのか、不必要なものははたしてないものか、放漫にならずそれらを把握しておくことはとても大切だ。電気代、ガス代、水道料、固定資産税、etc…。あ、あった、深川の庵の固定電話、これはいらない。

まずかけることもなく、かかってくるのは詐欺か営業

請求はふた月にいっぺん、架電することもないから基本料金なんだろう、いつも決まって4,955円が引き落とされていた。一年にして29,730円。固定電話にかけてくる人もいるに違いないと温存してきたものの、ここ数年かかってくるのは「オレオレ詐欺」か私たちには用もないテレアポばかり(一回だけ世論調査があった)、必要な連絡のほとんど全てはスマホでまかなわれている。なのでこの際、思いきって固定電話を解約することにした。2022年6月2日、ぎっくり腰の最中にNTTに電話すると翌3日から回線は早々にストップするという。しかしここでオペレーターが不穏なことを予告する。「お客様の電話はインターネット光回線を利用しているひかり電話です。回線開通と同時にこちらからVH-100というモデムと、RT-200というルーターをリースさせていただいてるのですが、RT-200の方は返却していただきます。それ以後のインターネット接続に際して再設定する必要が生じるかもしれませんが、その時はよろしくお願いいたします。」案の定、インターネット接続再設定地獄が始まるのである。

「インターネットに接続できませんでした」

うちのインターネットはVH-100→RT-200→LinksisのWi-Fiルーター→各機器、という順序でつなげられている。間のRT-200を飛ばしてVH-100をLinksisに直接つなげればいいだけのことだから難しくはないはずだが、試みてみるとやはりつながらず再設定が必要と見受けられる。再度NTTに電話して詳しく聞いてみようとすると「ここから先に手取り足取りで教えられるのは普段からサービス料を割増でお支払いいただいているお客様に限る」とつれないことを言う。私はというと「おやまあなんて冷たいこと…、まあ色々と大変だしそれならぎっくり腰が癒えてからにしておこう」と接続を元に戻して「ほっかむり」を決め込む。とはいえ「いい加減に返却しろ」とねじ込まれるのも癪にさわるし、6月23日、友人のアドバイスをもらいながら少し軽くなった腰を上げてようようにして取り組んだのである。しかし、結果はどうやっても「インターネットに接続できませんでした」…

そして誰も解決できなかった

「打ち込むべき『ユーザー名』と『パスワード』が間違っているのではないか?」とまず基本中の基本を誰もが確認する。プロバイダーであるso-netとチャットでやりとりすると間違ってはいない。新しいものに変えられることもなく16年間ほったらかしにリースされっぱなしの機器が経年劣化を引き起こしている可能性を否定できない、とNTTは新しいVH-100への交換に応じてくれた。それでも「インターネットに接続できませんでした」…。間にもう一度RT-200をかませても、パソコンとモデムを直接つないでも、なぜかもう元には戻らない。なにが間違っているのかわからないまま接続は復活しなかった。

30歳の手習でパソコンを始め、以来28年、今となっては少しも早くないマンションフレッツ光(私が暮らす古いマンションはインフラ的に最新の早い回線を導入できない)にしてからだって16年、一度も途切れることなく私はso-netと契約し続けてきたが、意を決して、この東京のインターネット回線はここでいったん解約することにした。6月27日、解約の申し出をする私に、so-netのオペレーターは「もう一度よりくわしく接続再設定のお手伝いをすることもできる」とマニュアル通りに食い下がる。「仕方ないから今もスマホのデザリングでどうにかしている。それでもなんとかなるんだし(この省察だってそうだ)、考えてみたら私は7・8月の2ヶ月で東京にはおそらく2週間ほどしかいない。なのにこの状況下で2ヶ月分8,300円のプロバイダー料金が引き落とされるのはどうにも…。だからいったんやめる。9月以後どうするかはこれから考える。まっさらにした新規接続の方が簡単につながるだろうし。」

「ご隠居」が意見を述べる

すると「今たとえば(系列の)『auひかり』に乗り換えるとすればこれだけのキャッシュバックがある。そうではなく解約ののちに新規契約の場合、キャッシュバックは総額で70,000円になろうか」と、親切にもそれぞれの問い合わせ先の電話番号まで教えてくれた。お客さんの困りごとにはできるだけチャットで済ませようと躍起になるのに(中にはひどいのがいるから、オペレーターのメンタルが危険にさらされることは理解する)、こうなると商売熱心である。私は穏やかにこう応じた。「その時にキャッシュバックが受けられるならありがたく享受させてもらう。だけどね、もう30年近く浮気もせずにずっと契約を継続してきたんだし、ひとつ意見させてもらってもバチが当たらないと思うから言わせてもらうよ。なぜ新規契約の客に限った「サービス」ばかりが手厚いんだ?そもそもキャッシュバックの原資はどこからくるんだ?それは「サービス」らしい「サービス」を受けなくなって久しい、なのに長期にわたって黙って契約を継続してくれる人たち、そこからじゃないのか?キャッシュバック目当てで解約違約金がなくなるたび乗り換える者だって実はたくさんいるんだろ?ねえ、だとしたら君たちの会社が大切にすべき『顧客』とははたしてどちらのことだろう。」

オペレーターは最後に「これでso-netのメールアドレスが使えなくなる」と念を押す。大丈夫、みなさん同様、もうとっくに使っていない。このご時世にも関わらず、深川の庵にはしばらくインターネット回線が届かない。NTTからリースしていた機器はすべて返却し、電話機やらなにやらは片づけた。ああ、もうすぐ隠居の身。おかげで庵は今さっぱりとしている。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

パソコンにこんがらがって:インターネット接続再設定地獄篇件のコメント

  1. いざ想定外の問題が起きるとなかなかなかなか大変ですよね。
    オイラはキャッシュバックにつられてあっちこっちと浮気を重ねたクチですが…。
    某やわらか銀行のときは観てもいないホークス試合速報の料金を知らずに数年間払い続けていたことに腹を立て乗り換え。
    さすがに浮気生活にもそろそろ疲れて店頭での勧誘には「もう疲れました」を理由に断る現在。

    ひろし

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