隠居たるもの、歌舞音曲のひとくさり。私は、中学に入る前から音楽を聴くことをことさらに好んだ。今になってもそれは変わらない。11月4日の夜、恵比寿ガーデンプレイスにあるガーデンホールに、Battlesという大好きなニューヨークのエクスペリメンタル・ロックバンドを観に出かけた。そしたらなんと前座として、もう40年近く前、高校生の頃に観ていた平沢進が出てくるではないか!その頃を想い出しつつ、つい自身の音楽遍歴を顧みてしまったのだ。

DJはロイ・ジェームス

小学校5年の11歳の時、1975年に初めてモノラルのラジカセを買ってもらった。両親は音楽に親しむような余裕のある人生を送ってこなかった。だから、それまでの我が家には、音楽を再生する機器がポータブルのレコードプレイヤーしかなかった。それも、私のテレビアニメ主題歌のレコードと「ドリフのズンドコ節」を回すためのものだった。ラジカセを買ってもらったのが嬉しく、AMラジオで放送されていたロイ・ジェームスの歌謡曲トップ10をせっせとマクセルのカセットテープに落とすようになる。キャンディーズが好きだった。スポンサーは不二家だったと思う。12歳になるとFMを聴くようになり、洋楽のトップ10番組を欠かさなくなる。その頃、チャートを席巻していたのは、発表されたばかりのイーグルスホテル・カリフォルニア」からのシングルカット。今も「ニュー・キッド・イン・タウン」を聴くと、ラジカセにかじりついていた中学に上がるあの頃が蘇る。

ロイ・ジェームス

1978年のステレオコンポ

中学に上がり、新しい友だちができると入知恵をする奴がいる。ステレオコンポがどうしても欲しくなり、一切そんなことに興味がない、恐ろしい親父に一世一代のお願いをする羽目になる。「工場の手伝いをして支払いますので、まずは買い与えてください」と、必死に頭を下げる息子を前にして、苦虫を噛み潰して親父はステレオを買ってくれた。もちろん支払いは途中で滞った…。中学2年のことである。そうなると、本物のバンドを生で観たくなるのが人情だ。世界にはコンサートというものがあるのもわかってくる。チャンスは中学3年になって巡ってきた。ポール・マッカートニー&ウィングス、日本武道館。人生初のライブ、申し分ない。チケットも必死になって入手し、焦がれて1980年1月の来日を待っていた…。

初めてはABBA

ポールは、成田空港に着くなり大麻所持で逮捕され、公演はすべてキャンセルとなった。その時の私の落胆をぜひご想像いただきたい。だけれども、チケットのとり方もおぼえたし(当時はとにかくプレイガイドに早く並ぶ)、払い戻されたお金もあることだし、「とにもかくにもコンサートに行ってみたい!」という気持ちは抑えがたく、入れ替わるように来日する大物のチケットを、自分の好みかどうかもよく考えずに手に入れた。1980年3月の日本武道館、ABBAである。初めての武道館、ライトが落ちてドキドキしたのもつかの間、すぐに眩いばかりに会場中がミラーボールの光に照らされ、いきなり「ダンシング・クイーン」でコンサートの幕が開く。どちらかというと先鋭的なものを好み、今や「筋金入り」と評されるロックリスナーの私が、人生で初めて生で聴いた曲、それは「ダンシング・クイーン」だったのである。ウットリした。まるで桃源郷のようであった。実は、このジャパンツアーがABBA最後のライブとなる。

NO MUSIC, NO LIFE !

あれから40年ほど。どれだけの数のライブに行っただろう。どれだけの数のバンドを観ただろう。私たちが高校生だった頃、タワーレコードが渋谷宇田川町のどんづまりのビルの2階で輸入盤専門の店舗を始めた。そんな頃に自身がリリースした「ジャングル・ベッド」(当時はP-MODEL)を、見事に「現在」の曲にアレンジしている“平沢進+会人(EJIN)”。今、ビールはエビスかサッポロのどちらかを選べるライブハウス、なぜならサッポロのお膝元・恵比寿ガーデンホールで、彼らを観ている。ここができてからももう25年になる。もちろん、Battlesも相変わらず先走ってて素晴らしかったことは言うまでもない。

人は14歳の時に聴いていたものを一生聴き続けるそうだ。確かにビートルズは聴く。だけど、ポール・マッカートニーが幾度となく来日しても、「観に行こう」という気には今さらどうしてもならない。ABBAの音源は1曲だけ持っている。もちろん、「ダンシング・クイーン」だ。

ああ、もうすぐ隠居の身。“NO MUSIC, NO LIFE !”

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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