隠居たるもの、春に心機を一転させる。明日から4月だ。それに合わせて心持ちを新たにしようと、庵の模様替えに晴れやかに取り組んでいる。というのは真っ赤な嘘である。実は「なんでそうなるの!」とコント55号の欽ちゃん(萩本欽一)ばりにジャンプしながらツッコみたい事象が繰り返されている。しかし無闇に跳ねたりはしない。なぜなら、その「事象」とはぶり返される「腰痛」だからだ。2021年2月18日にギックリと腰を痛めて以来、もう大丈夫かと思うと、ギックリとまではいかないものの若干の痛みを伴う「違和感」がぶり返される。今現在もご多聞に漏れず。その原因にハタと気がついたのである。だから模様替えをしているのである。

白馬から東京に戻るとぶり返す

ぎっくり腰に見舞われた→静養しリハビリし回復する→白馬に出かけて恐る恐るスノーボードをしてみる→問題なくカッコよく滑れる→悪化することもなかったと胸を撫で下ろして東京に戻ってくる→またぞろ「違和感」が顔を出す→もう一度カイロプラクティックで揉んでもらって痛みを緩和する→またしても白馬に出かけてスノーボードをしてみる→痛みはすっかりと姿を消して、ここ数年なかったほどに腰が回る→「完治か?」意気揚々と東京に戻る→たったの一晩で「違和感」がまたしても顔を出す→そしてそのまま現在に至る。そもそも、ぎっくり腰に一撃されたあの晩も、白馬から東京に戻ってすぐのことだった。つまり、白馬から東京に戻ってくると腰がおかしくなるのだ。今は首もうまく回らない(サロンパスを貼っておけばなんとかなるから、金策に駆けずり回る必要はない)。そういうことだったのか。だから模様替えをしているのである。

ソファの配置を変えてみる

新築なった散種荘に配置されているのは、曲がりなりにも新調した家具だ。それにひきかえ東京は深川のこのリビング、「圧」の強い私がどっかり座り続けた10年もののソファは、私の定位置だけが著しくへたっていて、反発力なく「グン」と沈み込む。ゆえにそこに座ると姿勢が「ずるりん」と崩れがち。なのに結局は惰性でそこに座る。これだ…。白馬で負担なく過ごした身体が、東京でそのバランスを見失う。だからといって、ソファの他の座面は支障ないのに、安くもないものを買い換えるのはとっても惜しい。それこそ「そこまでは首が回らない」。だから模様替えなのである。へたっているところに簡単に座れないようにすればいいのだ。熟考の結果、定位置はそのままで、私が1人がけソファに、つれあいが2.5人がけソファの反発力がしっかり残っている座面に、それぞれのソファを交換して陣取ることにした。人間の思い込みというのは愚かしいもので、10年にもわたって「この配置しかない」と信じ込んでいたその配置を変えてみると、狭い部屋は足下広く動きやすく感じられた。もちろん、座り心地もいい。

https://www.tansu-gen.jp/collections/mattress

仕上げに「タンスのゲン」のマットレス

ソファがそうだというなら思い当たることはもうひとつあって、だったらもっと早く気づいたらよかろうに、それは何を隠そう寝具である。私たちは浅田真央がCMキャラクターをしているエアウィーヴの、10cmほどの薄手のマットレスを使っている。「もしかして、これもへたってる?」と調べてみると、耐用年数は3〜5年だという。ううん、私たちはもう7年も使っている…。しかしそんな馬鹿な話があるものか、そんなに安くもないものの耐用年数がたったの3年だと?。常に新しい物を大量に消費させようとする「資本主義」のアコギな策略だと解釈しつつも、マットレスについて調査を始めてみた。すると何が正しいのかがわからなくなってしまう。「操作する」ために流されている情報ばかりに思えて、私にはどれも信ずるに足りない。結局、寝心地にも満足している白馬 散種荘をトレースすればいいのだと気づく。

散種荘もエアウィーヴ、しかし深川の庵のものよりグレードが低くさらに薄いものを選んでいる。それを補うために、下に安価で硬めのマットレスを敷いている。だったら東京でも、へたって薄くなりグレードも低下してしまったエアウィーヴを補うために、やはり下に安価で硬めのマットレスを敷けばいい。散種荘で下に敷いているマットレスは、無印良品の在庫一掃セールで見つけた掘り出し物だった。残念なことに後継モデルもなくもう手に入らない。そこで見つけたのが「タンスのゲン」(「タンスにゴン」ではない)のマットレスだ。

硬さは210N(ニュートン)

グニャグニャ動いたり不必要に沈み込むとエアウィーヴの反発力が台無しになる。だから下に敷くマットレスは硬めでないといけない。その硬さを指数化したのがニュートン数で、200Nもあれば十分に硬いとメーカーはいう。それもあてにならないと真っ向からいう人もいて、だから何をどう信じたらいいのかわからなくなるのだけれど…。しかし、これは1枚6580円だ、不調に終わっても後悔はない。「それなら私の分も注文してくれろ」とつれあいがいう。「タンスのゲン」の210N(ニュートン)の2枚を注文してみた。

シングルサイズのマットレス2枚、それほどに大きくない段ボール箱で届く。クルクルと圧縮されて収まっている。本体に傷をつけないようにビニールをほどく。みるみるうちに高密度ウレタンが開いていく。しばらく様子を見てからベッドにセッティングし、少し高くなったエアウィーヴの上に寝転んでみる。してやったり、いい具合だ。これであと何年かは引き延ばせる。

若いころは板の間に直に寝て起きたとしても、「ああ、痛え」と頭をボリボリ掻けばそれで済んだ。今そんなことをしようものなら致命的な支障を誘発するだろう。しかし、得てして人生というものは、乗り越えるべき困難が多いほど、より豊かになるものだ。ああでもない、こうでもない、今回もこれでうまくいくかどうか…。試行錯誤は快楽である。ああ、もうすぐ隠居の身。経験値は上がる一方だ。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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