隠居たるもの、「老いるショック」にまたしても頭を抱える。2025年6月27日、まだ7月にもなっていないのに日本列島は「すわ梅雨明けか」という炎熱に朝から覆われる、というニュースを静かで涼やかな白馬でどこか他人事のように聞いていると、昨晩にインターネットで発注したティーポットの「発送手配が完了しました」とのメールが届く。散種荘でずっと使っていたものの持ち手が残念なこと割れ落ちてしまったので新調したのであった。「であれば明日には届くだろう」と文面をさらに確認すると、なんと送付先は深川の庵となっている。つれあいに「ちゃんとこっちに届くようにしてねっ!」とわざわざ釘を刺されたのに、楽天で少しでも安く売っている店をさもしく探しているうち、送付先のチェックをすっかり忘れてしまったのである。いわゆる「本宅」である深川の庵が基本設定における送付先となっているため、「変更」のひと手間を失念するとこういうことになってしまう。なんとも「老いるショック」…、である。

新規開拓した「厨房2446」にて

「この発送手配完了メールが届いたら、配送に関しての変更のご要望をうけたまわることはできません。その場合は配送業者と直接やりとりしてください」と当然のことショップはつれない。そのうちクロネコヤマトからも「明日お届け」とのメールが届いたから「転送は可能か」とチャットでやりとりすると、「可能です。その際にかかる料金1,230円は着払いでお願いします」とのこと。少しでも安いものを探しているうちこうなってしまったのだから、我が落ち度とはいえここまでの追加送料を支払う羽目になるのは業腹だ。結局、転送することを断念し受取日時を帰京後に遅らせてもらい、次回に白馬に来るとき自ら抱えて持ってくることにした。一件落着したとはいえ「老いるショック」にため息つきしょぼくれている私に、「さあ新規開拓だ!新しくできた『厨房2446』やらへと昼食を食べに行こうじゃないかっ!」とつれあいがハッパをかける。

厨房2446のワンプレート定食:https://hakubameshi.net/shop/chubo2446/

かつてここは白馬飯店、私たち夫婦がこよなく愛した中華料理屋だった。その白馬飯店が2年ほど前に地域屈指のリゾートホテル シェラリゾートに移転、後続の店はうまくいかなかったのか(そそられなかったので私たちも足を向けることはなかった)こうして新しい店が開店したというわけだ。冬のインバウンドさんに沸く白馬、そうして資本主義のるつぼに放り込まれたことで、ホテルや大型飲食店のオーナーチェンジが外国資本の間で頻繁で、するとなると地域からの愛着とか人気などはお構いなし、そこに入っていたお気に入りの店が気がつくと忽然と姿を消していた、そんなことが日常茶飯事だ。どういった経緯をたどったのかは外野である私たちには知るよしもないが、はたして新しい店はいかがなものだろう。ランチは松花堂弁当とワンプレート定食のふたつのみ。値段も手頃なワンプレート定食をチョイスすると、これが美味しい。聞けば八方口にあった人気居酒屋の料理人がその店を閉めてこちらの厨房に入ったのだそうだ。夜も期待できそうだからさっそく3日後の晩に予約、そうこうするうちにしょぼくれた気分もどこへやら、やはり近場に美味しい店を見つけると華やいだ心持ちになるのである。

銭湯の二階を中心にして

昨年の秋に、つれあいの東京の仕事場を近所の江東区は猿江の銭湯の二階に引越した。私もそこに「出勤」して経理や総務的な仕事をすることもあるから、当然のことその近くで夫婦で食事をともにすることが多くなる。となると気分も一新「新規開拓」に意欲的になるわけで、やはり昨秋のこのブログにおいて紹介した通り、鯵フライ(骨つき)に惹かれて住吉駅近くの新大橋通り沿いにある「もとみや」という店を再発見したし、住吉銀座を錦糸町に向かって北へ進んだところの栄福という中華料理店に行きあたりもした。とりわけても私はいささかゴージャスな町中華 栄福のチャーハンと韮溜湯麺(ひりゅうたんめんと読む栄福特製そば、ニラとキクラゲとタケノコと豚バラのあんかけタンメン)にやみつきだ。定期的につれあいと通ってはそれぞれを注文し半分ずつシェアすることにしている。

下町で愛され続ける町中華 栄福:https://tabelog.com/tokyo/A1312/A131201/13002980/

考えてみれば、ここ2年ほどでこのブログにおいて何度も紹介しているかしこという弁当屋やとびきりの魚を商売する安彦水産など、お気に入りとなり通うようになった店々はすべて猿江の銭湯を木場方面へ南にまっすぐ下りていったところに位置していて、いわゆる「本宅」となる庵からよりもずっと近い。そこに栄福などほぼまっすぐ北に上ったところにある店が加わった。その流れにとどめを刺したのが、住吉銀座商店街入ってすぐの「さか田」である。

さか田の料理はとにかく美味い

いい居酒屋を嗅ぎつける感覚に秀でたつれあいはずっと前から気になっていたのだそうだ。私が酒飲みの友だちと食事をする約束を6月20日に取りつけたのにかこつけて、意気揚々とさか田に予約の電話を入れる。おそらく二階は居住スペースと思われるこぢんまりとした一階店舗に入った途端、「この店は間違いない」との確信を得る。まずは清潔で明るい。夫婦と思われる初老二人の目がホールに行き届いている。料理を作っているのは推測するに彼らの息子で、これがまたどれもこれも美味い。さほど種類が豊富とはいえないが、置いてある日本酒も申し分ない。週末の金曜日ということも相まって店内は満席だった。

さか田:https://sakata.owst.jp/

味をしめて、別の酒飲みの友だちと間を置かず再訪してみた。注文する料理を変えてみたがやはり美味しかった。立て続けの二度目ということで、ホールのお母さんもとてもフレンドリーに接してくれて居心地がいい。初回時同様「入浴料半額」という店子の特典を使ってすでに銭湯でサッパリひとっ風呂済ませているのもミソ、「満ち足りた感」が「ハンパない」のである。調子に乗って夫婦そろって両日とも翌日たっぷり残るほどに飲んでしまったのは反省点であるが…。

江東区は猿江ライフを満喫しつつ頭をよぎることなど

お気に入りの飲食店と南北一直線で繋がっている、なにもそれだけが猿江ライフの魅力ではない。先の月曜日の遅い午後のことだった。姪から「急なんだけど保育園に迎えにいってもらえないかな?」とSOSが入る。せっぱつまっているわけではないが、予定が少し変わってしまったんだそうだ。仕事をしていればよくあることだ。猿江の銭湯からはメロン坊やが通う保育園も彼らの家もほど近い。「お安いご用」と迎えに出向き、帰りがけ住吉銀座商店街の青果店でスイカを買い求め、家に連れて帰り親が帰って来るまでに夕食をともにしスイカを食べそして遊ぶ。午後8時前には父親が帰ってきたから受け渡し、私たち夫婦は銭湯の二階に戻って「本宅」へ帰る前に「入浴料半額」という店子の特典を使ってサッパリ風呂を済ます。

「銭湯の二階が『終の住処』てえのも考えてみれば悪くないかもしれないぜ?いつかはわからないが、どちらかに先立たれてどちらかが独りになるわけだ。部屋に風呂がないから下の銭湯に毎日入りに行くだろう、二日も下りて来ないとなると番台に座る大家さんが心配してくれるね。『どうしたんだい?』なんて訪ねてきてもくれるさ。つまりだ、孤独死のしようがないのさ」などと妄想を炸裂させて夫婦で笑っている。若いころは働く以外に選択肢はなかったし、もう少し年をとれば手元にあるものと残せたものでどうにかやりくりする以外に選択肢がなくなるに違いない。だとすれば、すでにやみくもに働くことができなくなった今が思案のしどころ正念場、移り変わる世相を予想してなにをどう残すべきか、妄想を膨らませ最善の組み合わせを模索しているというわけだ。ああ、もうすぐ隠居の身。とりあえず通販基本設定の送付先について考えてみようか。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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