隠居たるもの、醜態のリフレインに辟易とする。さすが我らが森喜朗である。期待に違わずやっぱりやらかしてくれた。老いたりといえど、その切れ味には寸分の狂いもない。生まれ持ったお調子者ぶりが、長年にわたる「無知蒙昧」に拍車をかけ、もはや余人をもって代えがたい。「オツム大丈夫?」と心配にすらなる妄言の数々は、以前から私を落ち着かない心持ちにさせる。腹立たしく、そしてどこか恥ずかしい。ラグビー部推薦で1956年に入学(のちに体調を崩し退部し、いわゆる弁論部である「雄弁会」に所属)した石川県出身のこのお方は、私が卒業した大学の大先輩だからだ。

果たして、森喜朗が口にするのは「失言」なのだろうか?

「女性理事は会議に時間かかる」から始まる今般の森喜朗の「失言」については、膨大な報道がなされているのでここで多くを語る必要もないだろう。松本人志が指原莉乃に向かって放った「お得意の体を使って」以来だろうか、メガトン級の凄まじい破壊力である。しかし、「失言癖」という「肩書き」まで持つ森喜朗先輩であるが、これらを果たして「失言」に矮小化してもよいものだろうか。手元にある広辞苑第三版によると、「しつ-げん【失言】言ってはいけないことを、不注意で言ってしまうこと。言いあやまり。過言。」とある。森先輩はお調子者で「注意」する「能力」を持っていない「軽やか」な人だ。だから、いつだって「不注意」なのであって、「注意」という文字が彼の辞書の中にない。そして「雄弁会」出身である、言いあやまったわけでもない。ということは、先輩からすれば、「言ってはいけない」とも考えておらず、多くの人(眼中にないから、ここにはマイノリティや女性は入っていない)が「正しい」と思っているに違いないことを、その機会があったから軽口まじりに開陳しただけなのだ。つまり、これらは彼にとって「失言」ではなく、思想に基づいた「確か」な言葉なのである。しかし確信犯ではないから、実のところ「なぜ怒られているのか」は理解ができていないんだとも思う。こんな人が野放しにされていること、それどころか「権力」まで持っていること、それが核心的な問題なのである。

森喜朗は「老害」なのだろうか

今回の女性蔑視発言とあの凄まじい「謝罪会見」は、オリンピックとからんでいるものだから世界中にオンタイムで配信された。インターネット上に「これ以上、世界に恥をさらすな」、そんな言葉を多く見受ける。それでは、森喜朗がもうちょっと上手に謝罪していたら、それでよかったのだろうか…。辞任すれば、それでいいのだろうか…。松本人志の「お得意の体を使って」や、ナイナイ岡村隆史がオールナイトニッポンで発した、新型コロナウイルス感染拡大を受け女性の収入が減り「コロナが明けたら美人さんがお嬢(風俗嬢)やります」という失言も記憶に新しい。これだって2人の「思想に基づく」言葉がふとした拍子に口を通して表に出たのに他ならない。世界経済フォーラムが、各国の男女平等の度合いをランキングする「ジェンダー・ギャップ指数」、最新の調査である2019年、調査対象153カ国のうち日本は121位。その実、この社会の有り様が、手を替え品を替え、実態としてそこかしこに頻繁に現れているだけだ。だから、もういい加減にお茶を濁すのはやめにしないか?もちろん森喜朗は辞任すべき、もしくは更迭されるべきとは思うが、「老害」として彼ひとりの問題にすり替えたって解決はしない。この際、重い腰を上げて、目をそらさず、「思想」を含めて社会のあり様を模索すべきだろう。7割以上の有権者が選択的夫婦別姓を好ましく思っていながらも、この20年にわたって民法はびくとも変わっていないのだ。

どうして森喜朗がオリンピック・パラリンピック組織委員会会長になったのか

東京オリンピックを招致した当時の東京都知事、猪瀬直樹はこう言っている。「2013 年に招致が決定した際に、(日本一のケチケチ会社というかコスト削減で有名な)トヨタの元会長の張冨士夫日本体育協会会長を組織委員会会長に推薦するつもりでいることが漏れると、僕に対する猛烈な個人攻撃が始まりました」個人攻撃とは、後に都知事を辞任する原因となった医療法人「徳洲会」グループから5000万円の資金提供を受けたスキャンダルのことだ。当時の首相 安倍晋三は、最初から組織委員会会長に森喜朗を充てるつもりで、それを拒否しようとする猪瀬都知事を攻撃するため、公安出身の杉田和博官房副長官(日本学術会議6人拒否を先導した人)を使って意図的にスキャンダルをリークさせた、という記事を読んだこともあった。ずいぶん前のことだ。清廉潔白なコストカッター張冨士夫では、オリンピック利権を循環させてくれないからなのだろうか。ことの真偽は部外者である私には当然のことわからない。しかし、今回も「問題は解決」と早々に森先輩を不問としたIOCを含め、笑っちゃうくらい「オリンピック憲章」からほど遠い人たちが、無理くり東京で開催しようとする「オリンピック」ってそもそも一体なんなんだ?とは思う。このモヤモヤはどこから来るのか。あれもこれも、すべからく同じ根っこに行き着く。こちとら生まれてこのかた東京都民、とっくのとうにどっちらけだ。ああ、もうすぐ隠居の身。あの先輩は、相変わらず、どこに出しても恥ずかしい。

参照:猪瀬直樹ツイッター https://twitter.com/inosenaoki/status/1357037110612484096?s=20

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です