隠居たるもの、秘密兵器に身をまかす。Oxelo(オクセロ)というメーカーの“大人”のキックボード Town 7XLが散種荘に届いていた。インターネット上で散々吟味したあげく、フランスのメーカーが中国で生産しているこの代物をチョイスしたのだ。2021年4月30日、昨日一日中降り通した雨がきれいにあがって、ここ白馬は気持ちのいい晴天。気温も上がり、お初のものの練習をするには絶好の日和である。寄る年並みを顧みず、私たちは颯爽と(実のところはおそるおそる)新調した「秘密兵器」に飛び乗ってみた。

スケートボードからキックボードに計画は変更された

ひと月ほど前、「白い日産マーチは我らが愛車 : レンタカーで白馬を闊歩する」と題して、白馬におけるいわゆる「足」について省察した。その中で、必要な時は駅近くのニコニコレンタカー白馬店で車を借りればいいとして、散種荘からそこに車を取りに行く全行程ほぼ下り坂の「徒歩40分」、それこそが避けて通れない悩ましき課題と再確認され、かかる課題を抜本的に解決する手段として「スケートボード」が稲妻のごとく登場した。以下に引用してみよう。

「ここでつれあいが閃いた。『そうだ、スケートボードだよ!』確かにそうだ。颯爽と山を下りた後、そのまま車に放り込んでしまえばいい。そこからはフリーハンドだ。雨が降ったとしても、山の中なんだしレインウェアを着込んで乗ればいい。素晴らしいじゃないか。ところで、誰がスケートボードで颯爽と借りに行くんだ?私たちはともにスケートボードに乗ったことがないはずだが…。」

私たちに感化されたのか、姪は大学に入学するやスノーボードサークルのメンバーとなった。その練習のためと称してスケートボードに乗っていたこともあった。その姪に聞いてみた。「スノーボードができるんだから、ちょっと練習したらスケートボードもいけるんだろ?」と。すると姪は涙を流さんばかりの勢いで諌めるのである。「まったくの別物です!ずっと下り坂の公道でいきなり素人が乗るなんてすっごく危険!お願いだからやめて!」こういう趣旨だった。ひそかに「ふふ、57歳にしてスケーターデビューするのも悪くはない」と目論んでいたから、いささかガッカリしたことは否めない。とはいえ命あっての物種、姪の勧めに従って、スケートボードからより安全なキックボードへ、計画は変更を余儀なくされた。

そして Oxelo Town 7XL は散種荘にやってきた

まず、電動である必要はない。吟味選択する際のポイントだ。日常的な移動手段と考えているわけではないし、「下り坂をいかに効率よく下りていくか」主眼はここにあって、登ってくるときは畳んでレンタカーの荷台に放り込むのだから、わざわざ割高なモーター付きを選ぶこともない。だからといって仮にも「命を預ける」ことには違いなく、見るからに「子供用遊具をただただ雑に長く大きくしたような」安直なものも心許ない。そして、やっとのこと見つけたのがこの Oxelo Town 7XL だ。14,900円という価格も妥当だったと思う。

車輪が太めで大きく、走行は安定するだろう。シンプルな車体にサスペンションがふたつあって、路面の凹凸を吸収するだろう。そしてハンドルにブレーキレバーがついていて、さらに後輪上部の泥除けを踏みつければそのまま車輪を押さえて追加のブレーキの役目を果たす。安全だろう。なによりも無骨でしっかりした作りが頼もしいし、シンプルなデザインが好ましい。梱包を開けて畳まれていた本体を開いてみる。同梱されていたスタンドを取り付ける。再び畳んで元に戻そうとする。ところが、YouTubeの解説動画によれば容易に反応するはずのレバーがびくとも動かない。どうやっても矢印通りになびかない。「まいったね」とばかりヤケクソで、本体が傾いて床に横倒しに接したままにも関わらず投げやりにレバーを押し続けていた。すると、ある一点の「角度」で、パチっとレバーが動きハンドルは難なく折り畳まれた。どうもこの子には斜に構えた「ツボ」があるらしく、その「角度」でないと要求に応えてくれない。つまりは愛しきアウトローなのである。それを見つけた私たちの元で、この子はさぞや個性的な本領を発揮するだろう。

可憐なカタクリの群生に囲まれて練習してみた

「春の妖精」とも呼ばれるカタクリという高山植物があって、それは白馬村の村花になっている。散種荘の周辺いたるところで群生している。すっきり晴れた春の日、私たちはカタクリの群生に挟まれた道をキックボードで行ったり来たり、下りたり登ったりした。「ボードのどこに重心をかけるのか」という感覚がわかっているからだろうか、すぐに乗りこなせるようになった。姪の言う通り、ハンドルがあるからターンは簡単だし、ブレーキで容易にスピードもコントロールできる。上り坂だって結構キックでいけそうだ。一昨日、オーバーホールに出した私の自転車も戻ってきて2台そろったことだし、これで機動力は段違いに向上した。それにしても面白がって練習し過ぎたようだ。お尻のほっぺのあたりが怪しくうずく。明日になるか明後日になるか…。ああ、もうすぐ隠居の身。筋肉痛は襲いかかってくるだろう。

参照:oxelo https://www.decathlon.co.jp/collections/urban-sports?gclid=EAIaIQobChMIzr2jqL2l8AIVwUNgCh3b8goKEAAYASAAEgKkGPD_BwE 「白い日産マーチは我らが愛車 : レンタカーで白馬を闊歩する」https://inkyo-soon.com/white-nissan-march/

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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