隠居たるもの、ためつすがめつ皮算用。2024年6月12日、スマホを眺めていたつれあいが「あ、来シーズンの白馬全山共通シーズン券の概要が発表されたよ」とつぶやく。23-24シーズンを滑り納めてから2ヶ月も経っていないから「ずいぶんと気が早いね」といぶかる向きもあろうが、どちらにしろ購入するのであるから少しでも割引があるに越したことはなく、「早割」などの動向がどうなっているかをチェックするのは当然の成り行きである。私たち夫婦が最も安く手に入れられるカテゴリーは「リピーター割」で、7月16日から8月8日までに申し込めば一人あたり105,800円、通常料金からすれば69,200円も廉価だ。しかし昨シーズンと比較すればやはり値上がりはしていて、リピーター割の値上がり幅は6,000円。とはいえこのご時世、「この程度なら御の字」と甘受するしかあるまい。

https://www.hakubavalley.com/info/news/3163/

値上げの時代に「隠居」を迎える我らやいかに

還暦を迎えて少しは分別がついたからだろうか、ひと月半にわたる今年のアルバイト期間、用心の果てぎっくり腰に見舞われることもなければ酒の飲み過ぎでばったり伏せることもなく、不測の事態でシフト変更、つまり「休ませてください」と願い出ることがなかった。よって皮算用した通りに時給は積み上がり、リフト券が6,000円ほど値上がりしたとしてもなんとか落ち着いていられる。しかし私たちの年恰好といえば、「失われた30年」と呼称されるデフレの時代にまるまる働き盛りを過ごし、そして一線から退きつつある今現在、実入りが少なくなることは避けられない。そのタイミングでインフレの時代に突入しているのである。アルバイトでも働けるうちはまだいいが、借金だらけの政府が年金を約束通りに「物価スライド」してくれるかどうかはどうにも不安だし、あれこれ難癖つけてこれ幸いと「不良債権」償却に取り掛かるのではという疑心をすっきり追い払うこともできず、「もうすぐ隠居の身」などと呑気なことを言っていていいのか、心中はどうにも穏やかでない。そんなこんなのタイミングで、慈悲深い岸田文雄内閣総理大臣のお達しによる定額減税がもったいぶってとうとう施される。

*この掲示板では立候補予定者全員のポスターが貼りきれないという。東京15区の衆議院議員補欠選挙同様、東京都知事選挙も魑魅魍魎大決戦?やれやれ、どうしたものか…

岸田文雄内閣総理大臣、これでよろしいですか?

実は私はつれあいが営んでいる会社の総務兼経理部長である。税理士とも打ち合わせをする。税理士たちにとってここ最近の気がかりは定額減税である。今回かぎりであるにもかかわらず、納税主体である各事業所に、シャレにならないほどの事務負担が生じているからである。そもそも「増税メガネ」と揶揄されることを嫌って立案した一過性の無理矢理な「減税策」であるから、一括での給付という建てつけがとれず、あくまで納税との絡みで処理することが余儀なくされた。具体的には定額減税(所得税3万円+住民税1万円=合計4万円)の所得税部分は月々の給与天引き分と相殺することとなった。そしてその事務作業は各事業所の総務に押しつけられたのである。例えば弊社では、昨今の必要経費もろもろの高騰を鑑み、プラプラとしか従事しない私の給与を今年から下げた。その結果、毎月の私の給与から天引きされる所得税は白馬のスキー場のカツカレー代にも満たない額となった。それではとうてい還付しきれない。そうした場合、残額が翌月そして翌々月に持ち越されるのだが、計算すると私の月々の所得税額では19ヶ月ほどかかる…

でも大丈夫、年内で控除しきれない分は年末調整でまとめて還付してもらえる。しかしここでまた問題が発生する。社長の許可を得てアルバイトをしている私のような場合、複数の事業所から給与を得ているから確定申告をしなければならない。そして確定申告する者は、年末調整で残額を処理してはいけないのである。それではどうするか、住所のある自治体とやり取りしなければならないのだ。確定申告をするのは2月から3月だから、申告書での計算を承認した江東区から、すべて残らず私の銀行口座に振り込まれるのはようやくにして来年の4月ということになる(自治体職員の業務も著しく増加しているそうで、まったくもって気の毒)。また慈悲深い岸田文雄内閣総理大臣は、給与天引きの所得税と相殺するに際し、施しを受ける者たちがその「ありがたみ」を噛み締められるよう、今回かぎりの「定額減税による還付額」がいかほどなのか、最後の1円にいたるまで給与明細に明記するよう義務づけられた。もちろんそれも各事業所の総務の仕事である。弊社は夫婦で営むファミリー企業である。もちろん二人で確認する給与台帳は作成しているが、給与明細までは必要としていない。しかし義務づけられている以上しかたない。総務部長として、まずは私宛てに試作してみた。上に掲げた「給与明細に類する追記」がそれだ。岸田文雄内閣総理大臣、これでよろしいでしょうか。

こすっからくしたたかにいこうぜ!

例えば、事務所にいらっしゃるお客さんと打ち合わせをするためにお菓子を買ってきたとする。エコバックを忘れてレジ袋を買わざるを得なかったとする。ゴミをまとめるために最初からそのつもりで所望することもある。そうした場合、1枚のレシートから、消費税8%のお菓子と消費財10%のレジ袋、それぞれに分けて伝票を作り会計処理しなければいけない。その上「そのレシートからインボイス登録番号が確認できたのかどうか」もそれぞれの伝票でチェックする。インターネットで必要なものを購入した場合、これまではパソコンに表示される領収書をプリントするだけでよかったのだが、今年からはPDFファイルで保存し検索しやすいようフォルダ分けするなど整理して電子的に管理することが義務づけられた。総務部と経理部の仕事は増加する一方だ。しかしそこから利益が上がるわけではないから給与には直結しない。仮に私が加わらず「一人会社」のままだったら、つれあいは事業を継続することを断念したかもしれない。そこまでして私たちから徴収した税金が原資であるのに、どうして政策活動費の経理処理が「どんぶり」でかまわないと思えるんだろう。その神経がそもそも理解できない。「政治には金がかかる」というけれど、政策活動費の内訳が開示されないからそれがどうしてなのかは本当のところ一向にわからない。

真夏日になった今日6月14日、夏に向けてつれあいの登山靴を新調しに神保町に足を運んだ。石井スポーツは今やヨドバシカメラグループだ。昨年にヨドバシカメラで洗濯機を新調しポイントがたっぷり貯まっていた。同一グループ内であれば融通し合えるそのポイントを使って、つれあいは素敵な靴を安価で手に入れた。しみったれた定額減税を原資にしたわけではない。いじらしく、こすっからく、そしてしたたかに。ああ、もうすぐ隠居の身。そうやって引っ掻き集めるしかあるまい。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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