隠居たるもの、秋晴れの下で幼児とたわむる。2022年10月29日、ここ数日のうすら寒さを忘れる心持ちのいい土曜日のこと、私たち夫婦は木場公園にお昼過ぎに来るよう呼び出されていた。宇都宮で暮らすつれあいのお兄さんが、ついでがあって東京に出向くから、孫も連れていることだし一緒にピクニックでもしようというのだ。私たちにとって姪孫(てっそん)はメロン坊や一人ではない。新型コロナ禍でもあり、頻繁に会うことが叶わなかった4歳の姉と2歳の弟、顔を合わすのは5ヶ月半ぶりになるが、こちらの姪孫ふたりはどれほどに成長したことだろうか。「食事の準備は土地勘のある当方にお任せあれ」とお義兄さんに伝え、私たちはお昼前11時20分過ぎにいそいそ庵を後にした。

「ママ、大丈夫かなあ」

お昼前11時半を過ぎた頃合いに通りかかってみると、深川の変わらぬ人気店、おでん種の三好にはずらっと列ができている。「もうそういう季節だな。うちの『おでん開き』はいつにするかな」などと素通りし、私たちは深川の新しい人気店、弁当の築地やまのに向かう。12時開店だというのに最後尾についた11時38分には隣の墓地沿いに長蛇の列。それを目にした墓参の一団がギョッとおののきながら通り過ぎていく。しかし箱詰めされた弁当を選んで料金をやり取りするだけだから、店さえ開けばあっという間だ。あまりの列に開店が5分早まったので、12時5分には首尾よくお昼ごはんをゲットし、木場公園に足を運ぶ。すっかりおしゃまになった4歳5ヶ月のお姉ちゃんは、鮪の竜田揚げがお気に召したようで、もぐもぐ頬張りながら「ママ、大丈夫かなあ」と我らの姪を心配する余裕さえ見せた。

ハロウィンの仮装といってカミキリムシになりきりはしゃいでいたメロン坊やは、両親に連れられキャンプに行っていた。

「遊具につかまっちゃった…」とお義兄さんから一報が入る。弁当を広げられる日陰のテーブルが空いていたら、もしくは芝生の広場の一画を、天気も良く混むだろうから先に着いてそんな場所を物色してくれないかと申し合わせていたのだ。しかし魅力的にからみあう滑り台を中心に据えた噴水広場で遊び始めてしまった姪孫たちは、その他のいっさいが眼に入らず、もうここから動かないという。たどり着いてみると広場の端っこにワンタッチテントをしつらえてシートが広げられていた。2歳の弟も口の周りをニコニコ黄色くしながらハンバーグカレーをモリモリ食べる。

この子たちの母親、つまり二人姉妹のうち宇都宮で暮らす下の姪が、出身大学学園祭に便乗して3年ぶりに同窓たちと顔を合わそうと上京を画策、祖父母と孫たちも移動を共にする。到着が遅れ気味で少し慌てていた自分の母親が、慣れない東京で間違えずにちゃんと電車に乗れただろうか、姪孫はそれを心配していたのだ。4年間その電車に乗って通学していたのだからまずもって大丈夫に違いないものの、姪孫は姪のそんな姿を知るよしもない。御一行の投宿先は従兄弟であるメロン坊やの家であるが、前日に保育園のハロウィン仮装大会にゴマダラカミキリになりきりはしゃいで登園したメロン坊やは、友人たちと約束した両親に連れられキャンプに行っていてこの日は不在。普段からなかなかいっしょに遊ぶことのない大叔父大叔母と二人の姪孫および祖父母、かくして「奇跡のピクニック」は実現したのである。

お姉ちゃんは運動能力に長け、弟はなんと鉄砲玉

「みててぇ!」とお姉ちゃんが遊具に駆け寄り、おっかなびっくりな都会のもやしっ子たちを尻目に、スルスルと鉄の棒を伝って「すべり台山」を制する。低い鉄棒で前回りもできれば、勢いよくブランコを漕ぐこともできる。すぐ横のブランコでもたもたしていた似たような歳の男の子が「速いなぁ…」と舌を巻く。姪孫を見守るついでに背後からからアドバイスしてあげたのだが、身体の動かし方をどうやっても飲み込めず太刀打ちできないその子は、結局のところ「ねえ、おじさん、僕の背中を押してよ」とちゃっかり私に助け舟を求める。お姉ちゃんはかくも驚くほど運動能力に長けている。「スポーツ系の習いごとをさせようかと思ってるの。疲れて帰って来てくれないとこっちが大変だから」とお義姉さんは冗談まじりに語る。

それにひきかえ2歳になったばかりの弟の方は「怖いもの知らずの鉄砲玉」で、興味を持つとどこにでもグイグイひとりで突っ込んでいくから目が離せないんだそうだ。確かにしっかり者のお姉ちゃんは周囲に注意を払うが、弟の動きはやんちゃで「衝動的」。生まれてから1年ほどはどこかポーッと見えたこの子だが、今や本性をあらわにして急成長の真っ只中、これからまさしく「目が離せない」、楽しませてくれそうだ。メロン坊やは実は用心深く慎重な子だから、姪孫たちの三者三様がなんとも面白い。落ち合って2時間を超えたころ、「あ、完全に寝られちゃう前に撤収!」とお義兄さんの号令がかかる。しっかりご飯も食べて、遊びたいだけ遊んで、子どもたちの目がとろんとし始めている。近々の再会を約し、私たちは手を振りあった。お姉ちゃんはすっかり眠くなっていたが、弟が満面の笑みで「バイバイ」とずっと見送ってくれた。

これってあの「公園デビュー」?

長年にわたりウォーキングなぞして日々に親しんでいる木場公園であるが、横目で眺めていた噴水広場に足を踏み入れるのは考えてみればこれが初めてだ。なんてたってここは子ども連れの聖地、私たちのテリトリーではなかった。若い親たちに混じって姪孫を遊ばせる初老にさしかかった夫婦、もしかしてこれってあの「公園デビュー」?打って変わってその日の夕刻は、大学の先輩にお招きいただいた、その先輩がベースを弾く、ぐっと平均年齢の高いバンドの素敵なライブに足を運ぶ。初対面であったが、主に70年代のアメリカンミュージックを奏でるそのバンドを引っ張るふたりのギタリストは、中学高校の10年先輩でもあった。兎にも角にも秋晴れの愉快な1日。そして明けて今日10月30日、紅葉の最盛期を迎えた白馬に身を移している。ああ、もうすぐ隠居の身。ここで姪孫たちとたわむる日を楽しみにしつつ。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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