隠居たるもの、雪が降ると心が躍る。スノーボーダーだからである。もちろん、関越自動車道で2日にわたって立ち往生を余儀なくされたドライバーの方々、大雪に見舞われた地域で除雪に苦心されている方々には心よりお見舞いを申し上げる。気候は変動している。寒いから大雪なのであって、暖かい季節であれば、これまた水害をもたらすような豪雨だったかもしれない。反対にここ数年を想い起こすと、雪が降らない上に暖かく、スキー場などは頭を抱えていたものだ。散種荘を構えて迎える初めての白馬の冬、雪に恵まれスキー場はどうにかオープンしたようだ。

雪が降り始めたその日に、ワックススタンドを組み立てる

12日の土曜日からしとしと降っていた弱々しい雨は、13日の朝、目が覚めたあたりからみぞれに変わる。朝食をとっていると、さらにそれが雪に変わった。そのうち雪は大粒になって、みるみるうちにあたりが白くなる。こうなるとベタなものを聴きたくなり、「ジョン・レノンは今年で80歳だって。え?ブルース・リーも?」(https://inkyo-soon.com/john-lennon-and-bruce-lee/)で紹介した彼の生誕80年記念ベスト盤をかける。2枚組の最後から2曲目に置かれた「Happy Xmas(War Is Over)」が目当てだ。彼が亡くなったのはぴったり40年前の12月8日(日本時間9日)。このベスト盤を聴きながら、私たちは届いていたガリウムの「ワックススタンド マルチ」をせっせと組み立てた。

「スノーボード手入れ」の履歴書

廊下にミネラルウォーター6本が入ったダンボール箱二つを少し離して置いて台にする。四半世紀ほど前のことだ。最初の頃は、その上にボードをのせてワックスをかけ、そして削っていたのだ。40歳も近くなると、腰を低くしたそうした姿勢を保つのが辛くなる。小さなアタッチメントスタンドを見つけて、つれあいの仕事机にそれをつけて作業するようになった。(参照:「スノーボードは鳥芽囁から出発する」(https://inkyo-soon.com/birds-and-buds-whisper/)だからといって万事解決したわけではない。広くもない日々の仕事場でワックスを削る。飛散するワックスの始末に苦労したことは言うまでもなく、これが日常的なことであれば「ホニャララの匠」に依頼すべきかどうか真剣に頭を悩ませていたことだろう。それがだ、専用のスタンドをなんとか広げる土間を持ち、そこで大っぴらに作業ができる。道楽ってえのは続けてこそだ。このワックススタンド マルチ、散種荘にとって象徴的什器備品なのである。

ガリウムの雑な組み立て解説

同梱されていたA4表裏の組み立て解説書がわかりづらい。QRコードを使ってYouTubeの解説動画にアクセスできるという。なるほど今時だ。iPadからアクセスしてみると、まず「パーツAとパーツBを接続しろ」という。動画ではグイグイと各パーツを押し込んでいる。「それを二つ作れ」とグイグイもうひとつ押し込んでいる。ここで動画を停止、パーツの向きなどを熟考した後、グイグイと押し込んでみる。固い。渾身の力で押し込む。ようやくのこと二つできる。動画の停止を解除し再生を続ける。すると「その際、パーツの向きに注意しましょう」はっきりわかるように「正しい向き」が解説されていた。少し待ちたまえ、順番が間違っていないか?渾身の力で接合された、目の前に転がる二つのものは、すっかりと逆さまだった…。年の功というやつである。あと10も若かったら忌々しさのあまり自暴自棄になっていただろう。ひと息吐いて気を取り直し、渾身の力で接合を外し、再び渾身の力で押し込んだ。

雪がやむ前に、ワックススタンドは出来上がる

板っきれの上に乗るスポーツなんてのは、得てしてそんなものだ。その時々の天候と条件に臨機応変に合わせなければならないから、なんというか“テキトー”なのだ。周辺グッズのメーカーに厳密さを求めても仕方ない。そして、ガリウムのワックススタンド マルチ(「マルチ」は、スキー・スノーボード両方可という意)が組み上がる。昼近くになって雪は小降りになっていた。その日の15時16分、私たちはあずさ46号に乗り込んで東京に帰った。

インターネットを開設し、このワックススタンドが出来上がり、これでひとまず散種荘の「構築」は一段落。この日を初めとして降り始めた雪は、1週間が経った今日も降り続く。そして数ヶ月は白馬を覆うだろう。今後の作業は春からのお楽しみ。冬を経験して、足りなかった工事も判然とする。雪が解けたらセルフビルドの屋外物置を二つ設置する予定だ。そして庭を作り始める。それまではスノーボードを楽しむことに専念する。

シャトルバスマップ

「スキー場が潰れないといいんですけどね」今日、近所のクリニックに血圧の薬をもらいに行った際のことだ。かかりつけの主治医がそうおっしゃった。この先生、とにもかくにもスキー好き。冬ともなると、私の体調よりも私と交わす「スキー場」談義の方が興味をそそるようだ。「インバウンドもなく、スキー教室をはじめとした団体客もなく、雪は降っているのに、スキー場は本当に大変でしょう…」ホームページを確認すると、八方尾根スキー場のコースはほとんど滑走可能になった。今日からシャトルバスも走っている。昨日に発表された今冬のマップを確認すると、嬉しいことに散種荘にほど近い停留所は変わらずそこにあった。私はスキー場に行こうと思う。

昨夕の会見で加藤勝信官房長官は「会食は感染を広げるからいけない。だが会食は大事なことだ」とさすが東京大学出身だけあって、私たちには容易に理解できない難解で矛盾する論を展開された。どうも「彼にとって情報収集の面で会食は大事だから、ガースー総理だけは大目に見てくれ」ということのようだ。しかし、ガースー内閣の喫緊の重点課題は「デジタル化」だったじゃないか。平井卓也デジタル改革担当大臣を呼びつけて、「ガースーです。リモートやってます」と薄ら笑ったらいい。ハンコをなくすことばかりがデジタル化でもなかろう。それに、財界人とか有名芸能人とか、著しく偏った人たちばかりから「情報」を聞くのではなく、スキー場関係者をはじめ、今こそ不安に喘ぐ人たちの話に耳を傾けるべきではなかろうか。ジョン・レノンのベスト盤は「Happy Xmas(War Is Over)」に続いてこの曲が最後を飾る。ああ、もうすぐ隠居の身。それは「GIVE PEACE A CHANCE」だ。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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