隠居たるもの、参観のついでに涼を得る。なんのことはない、「山の家プロジェクト視察ツアー」をようやくのこと果たした。本来ならばトイレのペーパーホルダーを持参して(参照:「トイレのペーパーホルダー#山の家プロジェクト」https://inkyo-soon.com/toilet-paper-holder/)ひと月ほど前にしておきたかったところを、信州にも及んだ豪雨災害や今般の新型コロナ禍で無闇に県境をまたぐことを控えていたら、「もうこれより先には延ばせない…」という悲壮感すら漂う8月の後半に至ってしまったのだ。とはいえ、連日「身の危険」を感じる酷暑に晒された2020年の夏の東京から、まさにこのタイミングで脱出できたことはまったくもって幸いであった。

10時ちょうどのあずさ13号で

この白馬行きはあくまで「視察ツアー」であるから、調査をかねてその度ごとに趣向を変える。前回6月9日の視察(参照:「8時ちょうどのあずさ5号で #山の家プロジェクト」https://inkyo-soon.com/azusa5/)は日帰りだったこともあり、新宿から白馬まで直通する「あずさ5号」とその復路「あずさ46号」を試してみることが大きな眼目でもあった。今回は松本まで特急あずさに2時間36分揺られ、そこからレンタカーで白馬入りすること、自動車が必要な場面を想定したここに主眼を置いていた。松本までで良いとすると1時間に必ずや1本と選択できる特急の本数も増えるから、なんとも融通無碍(ゆうづうむげ)である。また、えきねっと「お先にトクだ値」(https://www.eki-net.com/top/tokudane/kakaku_osakini_sp.html?src=kakaku_tokkyu)というインターネットサービスを使って2週間前までに予約をすれば、1人30%4000円ほどもお得なこと(特急券込みで往復9240円となる)を知り、それを試してみて猛烈に感動した。

松本に降り立つのは初めてのこと。レンタカー予約時刻を特急電車到着時刻の1時間24分後に設定し、駅周辺をいくらか散策しながら松本城まで歩いてみた。山に囲まれ文化が香る素敵な街である。8月20日午後1時あたりは松本の気温だって34度。しかし東京と違って、「熱」は日陰の中までしつこくまとわりついてはこない。今度、ゆっくり旅してみようと思う。

白馬五竜高山植物園は冬はスキー場

昼の盛りに一瞬33度くらいにはなったそうだが、白馬についたのは午後3時半頃、とっくに30度を切っていた。宿に荷をとく前に標高1515メートルの白馬五竜高山植物園に立ち寄る。ここは11月から5月まではスキー場。勝手知ったるゴンドラとリフトを乗り継ぐと、頂上付近は23度といったところか、冷涼な自然の風にあたり心身ともに伸び伸びと生き返る。6月から7月が最盛期のようだから、8月の後半ともなると開いている花は少ないのだけれど、ひっそりと可憐に咲いている子を見つけると、思わず感嘆の声が漏れる。拠点ができている来年は、最も良い頃合いにやって来よう。

こちとら大きな湯船がどうにも好きで、わざわざ近くに宿を取り、お気に入りの日帰り温泉「みみずくの湯」でたっぷりと風呂につかる。涼しく空気が爽やかだから、朝起きて宿の温泉にまたつかる。あまりに暑くてシャワーで済ますことが多かったこの8月の分を心置きなく取り返した心持ち。7月23日にオープンした、アウトドア用品ブランド snow peakの施設 LANDSTATION HAKUBA(https://www.snowpeak.co.jp/landstation/hakuba/)は「みみずくの湯」のすぐ隣、開発が過ぎるんじゃないかとちょいと心配だったもんだから、21日の朝にそちらも偵察してみた。八方尾根のゲレンデすべてを見渡す凄まじいほどの解放感、これまたスゴいもんを作っちゃって…。耳の端で小さな子供3人の嬌声を聴きながら、静かな施設内のスターバックスでコーヒーをいただいた。ゆっくり小説が読めそうだ。

大きな森の小さなお家(うち)

すっかり建ち上がった我が山の家「散種荘」に接し、こみ上げる感動とともになぜか私の頭を占めたのは私が高校1年だった時の河合奈保子のデビュー曲、1980年6月発表の「大きな森の小さなお家」(動画はこちら https://www.youtube.com/watch?v=DyQr7wjUi7E)だった。今から思えば暗喩に満ちた彼女のデビュー曲と違って、職人さんたちが一生懸命こしらえてくださっている私たちの「山の家」は字義通りまさしく「大きな森の小さなお家」、とても愛おしい。この日の作業は、壁紙と土間のタイル貼り、キッチンの取り付けだった。松本からやって来る現場監督さんに色々ご教示いただき、すでに購入してある家具や検討しているもののサイズ感や位置関係を確認しながら、いくつかの修正を依頼し、今後の日程についてコンセンサスを作る。どうやら9月いっぱいかかりそうで、庵にため込んだ荷物をこちらに持ち込むのは10月早々のこととなりそうだ。それはそれで、あと少しだけどまだまだたっぷり楽しめるということさ。9月にまた一度は来ることになるだろう。ああ、もうすぐ隠居の身。もう東京の夏を堪(こら)えない。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です