隠居たるもの、バリエーションに気を配る。白馬にはいくつものスキー場があって、散種荘からほど近いところとなると、八方尾根スキー場とHakuba47&白馬五竜、この二つとなる。散歩がてら近くを南にしばらく歩くと、この冬はすっかり雪に埋まっている平川という川にぶつかる。その向こう岸にHakuba47のベースが見える。橋が渡されていれば歩いてだって行ける。しかし、目の前にそんな橋はないのだし、どちらかというとゲレンデそのものがファミリータイプで私たちをお呼びでない。「だから八方尾根」ということになるのだが、いつもだとそりゃあ飽きる。晴天に恵まれた1月25日の月曜日、岩岳スノーフィールドに浮気をしてみた。

荒くれ者たちが嬌声を上げる

「晴天に恵まれた」というか、晴天だったからこそ、シャトルバスに25分揺られて岩岳に足を運ぶことにした。このゲレンデ、とにかく眺望が素晴らしい。それに、親しんでいないコースは好条件の時にもっと慣れておくに限る。それにしても便利な世の中になったもので、SuicaやPASMOにチャージするが如く、インターネットで手持ちのカードに「この日のリフト券」を事前にチャージでき、それをかざして麓からゴンドラに乗る。もちろん今この時だから、ゴンドラ1機には1人から少人数の同一グループしか乗せない。てっぺん付近の降車口から降りて、思わず歓声を上げる。なんたる絶景か。八方尾根に比較して、このゲレンデのコースは幅が広く、しかも起伏が入り組んでいない。スノーボードには滑りやすく、思う存分にターンが切れる。だからスノーボーダー比率はこちらの方が高い。せっかくだから、若い荒くれ者たちと交錯しながら、後期中齢者は「ヒャッホー」と声を上げて張り合ってみた。(おそらく彼らはそんな風には感じていないだろうが…)

北アルプスの絶景が一望できる山頂テラス「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」

白馬岩岳マウンテンリゾート、実はこの数年来、ブイブイ言わせているのだ。その象徴が頂上付近に作られた「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」。荒くれ者たちだって、カフェを併設したこの「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」には必ず立ち寄る。景観は資源である。この期に及んで大きな声を張り上げる地元の爺さん集団には辟易したけれど、こんなところでコーヒー休憩ができるスキー場など日本にはそうそう無い。通常時であれば、さぞかし賑わっていたことだろう。できたばかりの2018年の紅葉シーズンにもここには訪れている。上段が白く、中段が赤く、下段が緑の三段紅葉に溜息をついたものだ。ここはいつ来たって心持ちがいい。

岩岳スノーフィールドは今日1月30日から通常営業に戻る

ホームページで確認すると、今日から岩岳は通常営業に戻るそうだ。私たちが滑った1月25日その日の夕刻、施設従業員の1人が新型コロナウィルスに感染していたことが判明、近しくしていた他の従業員をその翌日からは現場に出すわけにもいかず、施設スタッフ36名すべてのPCR検査の結果(35名は陰性、1人が再検査)を待ち、外部業者に関連箇所の消毒依頼が完了するまで、縮小営業を余儀なくされていたのだ。大事に至らなくてよかった。

https://iwatake-mountain-resort.com/hmh

私たちが先に滞在した1月21日から27日までの1週間、白馬村で新たに判明した新型コロナウイルス感染症陽性者は28名。白馬村の人口は8,655人(2021年1月1日現在)だから、推計で13,962,725人(2020年12月1日現在)という人口に置き替えて「東京だったら何人となるか」と計算してみると、45,171人、平均して一日にならすと6,453人ということになる。人口密度とか白馬村で実施されている集中検査等の要件を無視したとんでもなく乱暴な計算には違いないが、その数字を目にして初めて白馬村の右往左往が理解できる。ただ特徴ははっきりしているようで「寮等の共同生活の場での限られた施設の中での感染が多い状況」(白馬村ホームページから:https://www.vill.hakuba.lg.jp/gyosei/soshikikarasagasu/somuka/covid19headquarters/8009.html)だそうだ。あれだけのウインターリゾートを8,655人では支えられず、あちこちから冬にだけやって来るリゾートバイトに頼らざるを得ないからこそ寮が必要で(だもんで冬の間は人口も増えているのだろうけど)、不注意にも密になったそこで感染が広がったようだ。もし、容易にPCR検査が受けられる仕組みが出来あがっていて、入寮に際しては「陰性証明」の提示が義務づけられるような社会であれば、こんなことにはならなかったのではなかろうか。「甘さ」があったのは確かだが、彼らばかりを責めるわけにもいくまい。これは「社会のあり方」の結果だ。感染拡大を食い止めるため、26日に白馬村中心部の飲食店従業員を対象とした長野県の無料PCR検査がようやく始まったと聞く。

I’ll be back

これは深川でしたためている。右往左往する現地に迷惑となってはいけないから、しばらくはこちらで辛抱する。それにしても、あちこちからほんのちょっと集まった白馬のリゾートバイト寮ですらこんなことになってしまうのに、どうやったら東京オリンピックが開催できるというのだろうか。今日の東京の新たな感染者は769人だというが、手が回らなくなって濃厚接触者の追跡を東京都が放棄している現在、この数字は眉に唾をつけて慎重に受け取るべきだ。その一方で、白馬はしばらくしたらほとぼりが冷めるだろうとも思う。傾向がはっきりしている上に、そもそも人が少ないからだ。ああ、もうすぐ隠居の身。その時には「I’ll be back」なのである。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です