隠居たるもの、予期せぬ美味が身にしみる。私たち夫婦の間で「1年に1度、それも8月に」と達観したうなぎである。それがだ、あれから3ヶ月も経たないうちにもう一度ありつける機会に恵まれた。「うなぎを食したい」という欲望に負け、今までの省察に反しておざなりな代物に飛びついたわけではない。だからといって分不相応な贅沢をしたわけでもない。まさに「降って湧いた」のだ。それではどこから?「人生最後のなけなしの大散財」から「降って湧いた」余波、考えるにどうやらそういうことなのだ。

「やっぱりうなぎを食べながら考えた」でこう省察されている

「うなぎを口にするのは1年のうち概(おおむ)ねこの一度きり、それも思い切って老舗高級店の暖簾をくぐって、と決めた。『概ね」と前置きが入るのは、宝くじなどが当たった場合や宝くじが当たったのに匹敵するほどのふって湧いた実入りがあった場合、はたまたありがたいことに『ご馳走しようじゃないの』という奇特な御仁が現れた場合、そんな機会があることを排除していないからだ。」(参照:「やっぱりうなぎを食べながら考えた」https://inkyo-soon.com/while-eating-eel/

つまり「宝くじなどが当たった」のだ。いや、「『ご馳走しようじゃないの』という奇特な御仁が現れた」の方が正しいかもしれない。丸の内商店会から、界隈の飲食店のみで使えるグルメクーポン5,000円×2枚=合計10,000円分が唐突に庵に送られてきたのである。11月25日までと期限はあるのだが、1軒で1度に2枚使うことも良しとされている。

「おそらく人生最後のなけなしの大散財」の余波

暮らしのテリトリー内にあって便利だから丸の内で買い物をすることが多い。ポイント5倍Daysなぞを利用し「丸の内カード」も長らく縦横に活用している。だからといってここまでの優待を今までに受けたことはない。新型コロナ禍、消費の喚起に躍起なのだろうか、それにしても…。ここではたと気づく。「これ、もしかして『超お得意』への特典…?」

「おそらく人生最後のなけなしの大散財」(https://inkyo-soon.com/the-great-shopping/)の一大拠点となったのは丸ビルのコンランショップであった。キャンペーンを使ったり展示品で良しとしたりいちいち工夫はしたが、インテリアであるからそもそも元値が張っている。そうした買い物を四苦八苦しながら一年も続ければ合計金額もそこそこ嵩む。丸の内商店会はこの「瞬間最大風速」をもってして「超お得意」にランクアップしてくれたのであろう。申し訳ないが、今後こんなことは絶対にない。だから遠慮なくクーポンを使わせていただくことにする。となれば、降って湧いた「宝くじ」もしくは「ご馳走しようじゃないの」なのだからうなぎなのである。丸の内界隈でしか使えないんだから、もちろん創業200年「鰻 駒形 前川」新丸の内ビル店だ。

「Go To イート キャンペーン」について考える

こうなったら少しでも「タダ」に近づけたいとさもしく考え、ついつい「鰻 駒形 前川は『Go To イート キャンペーン』の対象店舗なのかしら?」などと調べてしまう。「鰻 駒形 前川」は対象店舗だった。10,000円分のクーポンがある。つれあいと2人でキャンペーンを利用すべく「ぐるなび」なり「食べログ」を使ってランチの予約をしたとする。後に付与される1,000円分のポイントまで差し引けば超高級店の「うな重 上」2人前がほぼ「タダ」となる。ここでまたはたと気づく。「待てよ…、そうすると前川は『ぐるなび』なり『食べログ』に手数料を払わなきゃならないんだよな…。コンピューターが予約の仲介を自動でやるだけであいつらが何かするわけでもないのにな…。」私がほぼ「タダ」でうなぎを食すために、支援されるべきはずの飲食店から「手数料」が徴収される。それに、私に付与される「ポイント」だって、原資はとどのつまり税金である。つまり自分たちが支払った、もしくはこれから徴収される「税金」を「ポイント」に置き換えて喜んでいるだけだ。さらに、その「ポイント」を今後にうまく使えるかどうかも実際のところはわからない。そう考えてみると、潤っているのは何もしていないあいつらだけじゃないか…。目先の端金(はしたがね)欲しさに「悪徳金融」みたいなシステムに加担したとあっちゃあ死んだ親父に面目が立たない。これが「人生最後のなけなしの大散財」の余波だとすれば、それすなわち「山の家プロジェクト」の一環ということだ。そこにケチがついてもいけない。予約もなしに出向いてからに、グルメクーポン2枚はたいた上で、「がんばれ前川!」とばかりドーンと「特上」と張り込んだぜ、結局のところは…。

コンランショップに立ち寄って、「おそらく人生最後のなけなしの大散財」の顛末を、スマホに入った写真でずっと応対してくれたスタッフに披露した。喜んでくれて嬉しかった。ペーパーフラワーが商業施設に華やぎをもたらしている。一方で、季節が変わって空気が乾燥し、そこに「Go To キャンペーン」が絡みあって新型コロナが目に見えて拡散し始めたとも聞く。ああ、もうすぐ隠居の身。踊らされちゃあいけないな。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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