隠居たるもの、後ろにちょこんとついてみる。ご近所さんの間でこのところちょくちょく話題に登る「行列」がある。寺町でもある清澄白河には当然のことお寺や墓地が多い。その一画を占める大きな墓所の隣で「築地やまの」というお弁当屋さんが商いをしている。そのお弁当を求める人たちが、お昼時に墓所の壁に沿ってずらりと並ぶのだそうだ。1月23日が親父の命日で、今年2022年は7回忌。当日は都合が悪いものだから、不届きにもフライングして昨日1月21日に墓参に出向いた。両親が眠る墓は「築地やまの」のすぐ裏だ。せっかくだから精進落としの昼食にと、評判のお弁当を買い求めてみることにしたのだ。

「築地やまの」が清澄白河にある理由

墓参を終えたのは午前11時40分、お店が開くのは12時だけれども、うっかりすると角を曲がってトグロを巻くように行列は長蛇になるというから、いささか早いとは思いつつそのまま「築地やまの」に足を向ける。すでに数人が列を作っていた。上の写真で前から5人目に並んでいるのが誰あろう私である。みるみる後ろに人がつく。通りかかるほとんどの車が「何事か」と行列に脇目をふるもんで危ないったらない。築地で魚屋を営む小さな会社が立ち上げたというお弁当屋さんが何故に清澄白河の墓所の横で商いをしているのか、待ち時間の間に調べてみた。

*注:これを執筆した2022年1月時点では12時でしたが、久しぶりに訪れた先日2023年11月、開店時間は午前11時30分となっていました。

「創業は2017年9月 東京の某有名企業のオフィス内に専属弁当屋として始まりました。2019年に加工場・調理場を江東区清澄白河に設け、日に300食の製造ラインを整えられるまでに成長いたしました。販売場所の都内有名企業様は、このコロナウイルス騒動で、皆様がテレワーク業務。当然、弊社は休業を余儀なくされてしまいました。また、今後 自宅勤務要請が解除になった後も、契約していた販売所の権利を仲介の会社が経営する飲食店に奪われ、契約解除となってしまいました。つまり、売り先・売り場を完全に失ってしまいました。

(2020年)4月からの売り上げは0円。倒産もやむを得ないのか。。。
しかしこのまま諦めるわけにはいかない!
弊社の開発してきた「美味しい!!」を埋もれさせてはいけない!!と5月から本格的に、Twitterにて【築地やまの清澄白河】を立上げ、地域密着の仕出し弁当とネット受注に限定し再開。江東区を中心に配達販売も開始」

そして直売所も開設し、いつしか長蛇の列ができるようになったというのだ。(上の引用は2020年5月に記述されたようだ。)

「98%売上減からの復活【築地やまの】と清澄白河から美食を発信 」https://camp-fire.jp/projects/view/281226から引用

おいしい魚を食べたくとも家で調理するには限界がある。

若い女性2人と男性1人、高校のクラスメートで立ち上げたという「築地やまの」。築地というからにはやはり魚介が中心なので、魚三種弁当と海鮮弁当(それぞれ1,000円)を買い求めてみた。魚三種弁当には焼き魚が三つ、鯖の塩焼き、鮭の西京焼き、鮭の醤油麹焼き、そしてちくわの磯辺揚げ。海鮮弁当はいわゆる海鮮丼。さすが魚屋が始めたというだけあって、とても美味しい。そもそも仕入れそして火力の不足など、魚を家でうまく調理するにはどうやったって限界がある。その「特別感」を考慮すれば、この値段はかえって安い。営業は木曜日から日曜日、週末のちょっと贅沢なランチにうってつけだ。うなぎ弁当、かき飯、それに幕のうち弁当なんかがあったので今後に試してみようと思う。お天道様は正しくそして一生懸命に働く若者を見限ったりしない。リピーターが続出し、日々に長蛇の列ができ、今や常に完売するという。

晩酌のお供も用意されている

店頭にはその他お惣菜も並べられていたから、タコの唐揚げとポテトサラダを買い求め、晩酌のあてとした。お惣菜はどれもひとつ300円、ふたつセットで500円。当然に美味しく、なんとも重宝だ。我が庵から少し距離があるといっても、必ずや再訪したい。となると素通りしたんでは亡き両親に申し開きできない。結果、頻繁に墓参し親孝行ができる、つまり一石二鳥というわけだ。

もうひとつ、橋膳という弁当屋があるのだ

実をいうと、今や清澄白河はコーヒーに続いて弁当激戦区だ。この「築地やまの」の他、より我が庵に近いところで「橋膳」というお弁当屋さんが昨夏に商いを始めた。月曜から金曜まで、提供するのは常に日替わり700円一種のみ。今日はどうしようと考える必要がない。メニューは蓋を開けてからのお楽しみ。ここも新型コロナ禍、都心から移転してきた。開店から数ヶ月、しっかり固定客もついたようで、今では午前の早い時間に「〇時○分あたりに取りに行くから」と電話予約しておかないとありつけない。なにしろご飯が温かいのがいい。清澄白河はいつしか至れり尽くせりの町になっている。

新幹線の座席に座り信州に向かっている。ついさっき軽井沢で若い旅行客はすべて降車した。お昼時だから食事を取りもしたのだが、世情を鑑みあまり大口を開けないでさっと食せるものをチョイスした。それは何かと尋ねたら。ああ、もうすぐ隠居の身。近所の老舗ベーカリー ゴルサムの焼きそばパンだった。

この日の橋膳の日替わり弁当は、鳥の筑前煮と豚の冷しゃぶ
投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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