隠居たるもの、季節に合わせて趣向を変える。やはりビールなのである。一昨日に人間ドックも終えた。やはりビールなのである。寄る年波に合わせて無闇矢鱈に飲まないよう気をつけてはいる。それでも、やはりビールなのである。6月下旬、梅雨真っ盛りだ。合間に晴れた今日なぞは、やはりビールなのである。友だちやらなにやらとやりとりしているのだが、15時半に顔を合わそうということになった。だから、やはりビールなのである。

2020年のビール解禁情報

のべつ幕なくビールを飲むこと、とりわけ庵で惰性で飲むことを自らに禁じている。それについては昨年8月27日の省察「テキーラの効能:晩酌の履歴書」(https://inkyo-soon.com/tequila/)において詳(つまび)らかにした。あまり気にも留めず外食先に限らずビールを飲む、我が庵で来客もないのにビールが飲める、私たちにとってこれはいわば “季節の風物詩”なのだ。初夏の訪れとともに、清流から「あゆ漁が解禁されました」とレポートされる、我が家においてはあれに類するものなのである。賢明な読者の皆さんは、4月の後半あたりから様々な省察で「ビール」という単語が頻出することに気付いておられたことだろう。初夏から夏にかけて解禁されるビールのシーズン、今まで始期も終期もその年の陽気を見ながら「もうそろそろ」と柔軟に判断してきた。そして今年の始期は早かった。それは早々に暑くなったからだろうか?実のところそうではない。それは、新型コロナ禍で外食をしなくなったからに他ならない。

ハートランドビールを発見する

夜に寄り合いがあり外食するとき、「週末でDABADA」(参照:「酒場でDABADA」https://inkyo-soon.com/dabada/)するとき、いつだって「とりあえずビール」を飲む。つまり、お店では飲むのだ。その「お店で飲む」ことがなくなった。季節は初夏に入り、枝豆が美味しい季節になる。外食をしないのだから庵でまで堪える必要もない。よって早々に「解禁」を宣言したのだ。そんなとき、スーパーの売り場でハートランドビールを見つけて「爽やかな感じ?」が思い起こされ購入してみた。清々しく美味しい。考えてみれば、このビールは「お店」でしか飲んだことがない。つれあいが言うには「“瓶”というのがいいのかもしれない。缶ビールは金属の味がするからイヤっていう人がいるもんね。」確かにそうだ。

こんなこともあった。ある日、同じ集合住宅に住む若い友人が我が庵の呼び鈴を鳴らす。「長野の友だちが送ってくれたんで、おすそ分けにどうぞ」とこごみを持ってきてくれた。晩酌でビールを飲む予定はなかったんだけど、その日はありつくほどのことをしたわけでもないんだけど、絶好のビール日和だったし堪えきれずに「えいや」とばかりハートランドの栓を抜いた。こごみもビールも苦みばしって美味しいのなんの。そいでもって爽やかさが身に沁み渡る。ありがたくてなんだか救われた心持ちになった。これも新型コロナ禍だからこそのおこぼれに違いない。おすそ分けしてくれた彼だって在宅で仕事をし、勤め先に通ってはいなかった。

馴染みのクラフトビール屋さんがすなるテイクアウトなるもの

近隣に馴染みのクラフトビール屋さんがあることは、これまでの省察でも触れている。フォークウェイズ ブリューイング(参照:「古い町の新しいお店:清澄白河 Folkways Brewingの巻」https://inkyo-soon.com/folkways-brewing/)やムクラフ(参照:やさしい夜に誘われて」https://inkyo-soon.com/on-a-gentle-night/)などだ。“自粛要請”の中で苦心する彼らは、瓶詰めも含め早々にテイクアウトを始めた。店の外にスペースをこしらえたりもしている。怪我の功名とでもいうのか、この間これが数少ない憩の場となった。明るいうちに集って屋外でビールを楽しんで適宜に手を振って解散する。これはビールなればこその趣向だろうし、過ぎたるは及ばざるが如し、いきすぎず終われることが何よりだ。庵に帰って、愉快を噛みしめながらもう一杯やれる。ただし、少しずつ獰猛になっている蚊には注意が必要なのだが…。

そして今日もとりあえずビール

昼くらいに、何度も食事をともにした現役大学生の後輩から電話があった。「第一志望の会社に就職することになりました」とのこと。彼の希望が叶ったことも喜ばしいが、わざわざ連絡をくれたことがより嬉しい。彼とビールを酌み交わすことはずっと先のことになるだろうけれど、なにがしかが通っているから大丈夫、これから15時半待ち合わせのビールの準備をそろそろしよう。人間ドックの速報値もそんなに悪くなかったし、あと今季2ヶ月のシーズンを堪能しよう。ああ、もうすぐ隠居の身。やっぱり、とりあえずはビールなのだ。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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