隠居たるもの、5月の風にビールを欲す。洗濯物をベランダに干しているときだった。つれあいが後ろから「そろそろベランダでビールをやりたいところだね」と呼びかける。手を動かしながら「まったく季節ってえのはどんな時でも順番通りに巡ってくるものだなぁ」などとつい感慨にふける。すると人間てえのは同時にその一方で「はてさて、去年の今頃はどんなだったけか」と記憶をたどったりする。すると「あれ?」と引っかかるものがある。「ステイホーム」の徒然なるまま調べてみた。2021年5月初旬、驚くほどに2020年の5月初旬と何ひとつちっとも変わっていない。

*今回、写真と本文に関係はない。新緑の素敵な季節、少しでも清涼な心持ちになっていただきたく、このところの白馬の写真を掲載する。

「緊急事態宣言」の延長が発表されたのは一昨日2021年5月7日のことだが、第一回目の「緊急事態宣言」の延長が発表されたのは2020年5月5日のことだった。

当初4月7日から5月6日までとされた第一回目の「緊急事態宣言」、その期間を延長することが「発出」されたのは一年前の5月5日のことだった。当時の安倍晋三首相は目を潤ませて「敬意と感謝と絆があればウィルスは克服できる」と芝居っ気たっぷりくさいほどの大見栄で記者会見を締めくくる。申し訳ないが、私は顎を外した後「この人マジ?」と大爆笑してしまった。当然に、なかなか届かなかった小さい布製マスク2枚とそれだけではウィルスは克服できずに(もしかしたら私が間違っていて、私たちの「敬意と感謝と絆」が足りなかったのかもしれない。だとしたら、誰の「敬意と感謝」が、どこに対してどれくらい足りなかったのか、ここでいう「絆」とは何を指しているのか、それらを「科学的に」提示していただきたい)今般の第3回目「緊急事態宣言」に至るわけだが、まるでデジャヴュ(既視感)のように、ほぼちょうど1年経った2021年5月7日、第3回目の「緊急事態宣言」の延長が、安倍晋三を継承するというガースー総理によって「発出」された。

*ランチをとったSnow Peak LAND STATION HAKUBAのレストラン「雪峰」から

記者会見で「変異種に対するこれまで以上の対応とは?」と質問されて、「ワクチン。そしてさらなる手洗いの徹底をお願いする」と返答するガースー総理…。この1年、この人はいったいどのように「国民のために働」いてきたのだろうか。いかりや長介が存命であったら「ダメだこりゃ!」と突っ込んだことだろう。この「役者」は笑われることすらできない。どちらにしろ、心のない「役者」たちの演技がこちらに届くことはない。

牧伸二が突然のこと私に降りてきたのは2020年5月6日のことだった

昨日2021年5月8日、私とつれあいは小名木川遊歩道にウォーキングに出かけた。「去年のこの時期もやたら歩いていたっけね」とつれあいが語りかけてくる。そう、私たちはやたら歩いていた。昨年のこの時期も「緊急事態宣言」下だったのであり、ウォーキングと食材の買出し以外に外出の先も見当たらなかった。そんな中、小名木川遊歩道を歩いていて唐突に牧伸二に取り憑かれ、新たに「やんなっちゃった節」をこしらえたことまであった。「待てよ、それっていつのこと?」一年前の5月6日のことだった。まるで一年前をなぞるかのように、私たちはデジャヴュのような今日を生きているのである。

*白馬に咲くスズラン

「お前さん、もう少しで土左衛門になるところだったぜ」とつぶやいたのも2020年4月26日のことだった

今年2021年4月25日の日曜日、第3回「緊急事態宣言」が始まった日のこと、「これってデジャヴュってやつ?」とソワソワするような心持ちになったのはここからだ。「いつもと同じじゃあ飽きちまうから」と私たちは久しぶりに隅田川テラスを北上するウォーキングに出かけた。すると、陽気とか風向きとか、なんかこの感じに抜き差しならない憶えがある。しかしなんのことはない。あれはちょうど1年前、初めて隅田川テラス北上ウォーキングに出かけたのは4月26日、やっぱり日曜日のことだった。ほぼピッタリ1年前の同じような時刻にまったく同じ場所に立っているのだから、似たような陽気と風向きになっても不思議ではない。消防艇のまわりで隊員の皆さんが潜水訓練をしているのを見て思い出した。私たちは土左衛門になりかけた兄ちゃんをこの隊員たちが救い出すのをここで見守っていたんだ。狭い範囲の中で、行動は自ずと限定されるというわけだ。

*この写真は、4月25日現地 隅田川テラスのもの

東京オリンピックは2021年7月23日から始まり、「Go To トラベルキャンペーン」は2020年7月22日から始まった

ちなみに、第1回目の「緊急事態宣言」が全国的に解除されたのは2020年5月25日のことだ。「新型コロナはこれで大丈夫、これからは経済を回さなくちゃだめだ」と大きな反対を押し切って「Go To トラベルキャンペーン」を開始したのは2020年7月22日。手前勝手に「見たいものを見たいようにしか見ない」あの方は、誰に教えてもらったのか「エビデンスがない」と仏頂面で強弁したが、少しでも「勉強」をした8歳児にだって容易にその因果関係は理解できよう。新型コロナウィルスは当然のことさらに蔓延した。そして「打ち勝った証」がどこにも見つからないまま、大半の人が望んでいないのに、2021年7月23日、東京オリンピックが開催されようとしている。昨年と違うこともひとつある。ビールが最も美味しい5月、宣言下にある街ではそれを提供することすら禁じられている。ああ、もうすぐ隠居の身。あんあんあ やんなっちゃった、あんあんあ おどろいた、なのである。

*白馬の小学生は安全だ。なにしろヴィクトワール・シュヴァルブラン・村男Ⅲ世が背中でゆる〜く睨みをきかせている。

参照:「あゝ やんなちゃった、牧伸二が突然のこと私に降りてきた」https://inkyo-soon.com/anana-yannattyatta/ 「お前さん、もう少しで土左衛門になるところだったぜ」https://inkyo-soon.com/drowned/ 「ヴィクトワール・シュヴァルブラン・村男Ⅲ世のこと」https://inkyo-soon.com/victoire-cheval-blanc-3/

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です