隠居たるもの、どうにか無事に一年を終える。昨日2021年12月29日、あずさ46号に乗って白馬から東京に戻って来た。暮れから正月のことが話題に上るとき、「年越しは白馬で?」と聞かれることが多くなった。「せっかくのお正月休みだからカントリーサイドでゆっくり過ごすのだろう」とご推察いただいてのことと思うが、申し訳ないことに私たちは東京の深川で正月を迎える。なぜなら「静かな東京」を味わえるのは一年のうち正月だけで、逆に白馬の年末年始はスキー・スノーボード客でごった返すからだ。昨年から「出社義務」をそろって持ち合わせなくなった私たち夫婦である、常から「人流」の頃合いを見計らう。この「融通無碍」こそがなによりありがたい。

「数年に一度」レベルの寒波の合間に岩岳で滑る

今シーズンは岩岳スノーフィールドのリフトシーズン券を買い求めた。コースが私たちに好ましいからだし、(オープン期間が短いからか)最も廉価でもあったからだ。(初老にさしかかっているがシニアではない私たちの料金は、八方尾根スキー場で63,000円、岩岳スノーフィールドなら34,000円。シーズン券を持っていても他のスキー場に必ず「浮気」することはあるから、その時のリフト券代をこの差額がたっぷりと飲み込んでくれる。しかもこの冬は、太っ腹な長野県のご好意で、平日ならリフト券は半額(それについては「2021年12月14日、シーズンイン」参照 https://inkyo-soon.com/14-12-2021-season-in/)なのである。雪道となると岩岳までは車で20分ほどかかる。といっても散種荘から歩いて2分のところに、スキー場に送迎してくれるシャトルバスの停留所があるのだ。「数年に一度」レベルと連呼される寒波の合間、27・28日と連日、さっそく私たちは行ってきた。

おニューのウェア着たおあねえさんは、いつしかひっそり上達していた

昨冬あれだけ(ちょいと厳しい)八方尾根のリーゼンスラロームを滑り倒してみると、初老にさしかかっているとはいえ、人間てえものはさすがに上達するものなのである。新しいウェアに身を包んだつれあいの滑り具合がいたって「威風堂々」としていることに驚く。明るいサックスブルーが颯爽とたなびく。私もこの2日間で新調したステップオンのブーツとビンディングに慣れた。いや、むしろこう言った方が正しいかもしれない。「これまでのものより新しいビンディングが微妙な角度を容易に調整し得るため、バッチリ好みのセッティングで『若々しい』滑りを取り戻した。」なんだか楽しいシーズンになりそうなのだ。

行きと帰りのシャトルバスの間隔の問題

しかし岩岳スノーフィールドにはひとつ問題がある。行きと帰りのシャトルバスの間隔が長いのである。行きのシャトルバスはうちの近くを8時台と9時台に出る。帰りのシャトルバスはスキー場を15時20分と16時20分に出る。9時台のバスに乗って出向き、帰りは15時20分に乗るにしても、現地で5時間半ほどを過ごさなければならない。初老にさしかかった私たち、実はそんなに根を詰めて滑っていられない。裏山のような八方尾根スキー場だったら、早々に切り上げて気が向いたらゆっくり歩いて帰ったっていいし、なんだったらタクシーを呼んでも大して罪悪感を感じない。しかし散種荘から相応の距離がある岩岳だとそうともいかない。そこで「スキー場で文庫本」デビューすることにした。幸いシーズン券保持者は「スキー場レストラン利用20%オフ」という特典にあずかる。このスキー場では長い昼休み「シエスタ」を習慣にしようと思う。また特典の中には、スキー場に隣接する日帰り温泉「岩岳の湯」入浴無料というのもあるから、「冷えた身体にひとっ風呂あびて、ここはひとつご好意に甘えて家までシャトルバスで送り届けてもらう」という算段も今後に向けて着々と進めている。

白馬「一成」の鴨鍋がこの一年を締めくくる

今も一般的に「仕事納め」と言われる12月28日、すでに白馬界隈は「平日」という趣きでなくなり始めた。お正月休みのリゾート客が少しずつ山を上がってくる。岩岳スノーフィールドも例外ではなく、前日27日より明らかにお客さんが増えた。そうした人たちをかき分けて、久しぶりに2日連チャンで滑るとなると流石に疲れた。満員となった15時20分のシャトルバスに乗って帰宅し、この日の分の洗濯を済ませ、日帰り温泉「郷の湯」まで歩いてゆっくり下る。地元の方々といっしょに身体の芯まで暖めてから、斜向かいの「一成」でこの冬お初の鴨鍋をいただく。せっかくだからと日本酒「夜明け前」純米吟醸を注文する。ここは信州、島崎藤村にちなんで名づけられた銘酒である。この鴨鍋は心底から美味しい。とりあえずこの晩酌が今年なり私たちの「遊び納め」である。今このときが「夜明け前」、いろいろそうあってほしいとも願いつつ…。

果たして「Movin’ On Up」したか

2021年のテーマは「Movin’ On Up」だった。散種荘での四季を初めて経験して、それでもって自分たちの「新しい生活様式」の絵もできてきて、「一段上に昇る」そんなイメージをしていた。果たしてどうだったろうか。まあどちらにしろ、初老にさしかかってまでいちいち細かい反省なぞするつもりは最初からない。今年はこれで暮れていく。ああ、もうすぐ隠居の身。みなさま、良いお年を。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です