隠居たるもの、雪に囲まれ汗をかく。年末進行を一時中断し、白馬の散種荘に来ている。雪に誘われうずうずしちゃって押っ取り刀で駆けつけたのかというと、そもそも私は衝動に任せて行動するタイプではないからそんなことはない。散種荘に出向く日取りは大体2ヶ月ほど前に決めている。泣きべそかきながらガースー首相が「Go To トラベルキャンペーン」を中断したところで、自宅から別宅に赴くだけだから最初からキャンペーンの対象にも入っていない。それに、移動はするけれど、ここでだって私たち夫婦は基本的に「ステイホーム」なのだ。だから予定を変えることはしなかった。

到着時の室温は3.5℃

12月26日、新宿で「8時ちょうどのあずさ5号」に乗車する。全席指定のこの列車、満席でぎゅうぎゅうということはなかったが、そこそこに席は埋まっていた。誰もがマスクをしている。大きなスーツケースを転がす中国の方々やオーストラリアの方々も結構いらっしゃる。子ども連れの家族も多い。その子どもを除けば概ね静かで、私たちの車両で続け様に話し声をたてているのは日本人の若い男性2人組だった。ガースー首相によると「移動で感染はしない」そうだけど、根拠の在り処を明示しない彼の言葉はいつだって信用できない。トイレに立つたび手もしっかりと洗う。

11時42分白馬着。小雪がちらついているが、傘までは必要ない。馴染みのハピアA-COOP白馬店に立ち寄り、この滞在中の食材を買い込む。うずたかくあちこちに盛られた雪を目にし、この2週間でどれだけ降ったかを想像する。タクシーで散種荘に向かう。ここは一応は別荘地、到着日を知らせれば、業務の一環として管理事務所が道から玄関までの雪かきをして通路を確保してくれる。室温は冷え冷えと3.5℃だった。

これはトラベルではない、まずは働け

最初に水を通す。水道バルブやガスなどライフラインの配置と雪の積もり具合を確認し、春に必要な追加工事を想定する。ストーブで薪を焚き、それだけではおっつきそうもないからエアコンのスイッチも入れる。ロールカーテンを開けて、窓の外を眺めやる。こりゃあ豪勢に降ったもんだ。放っておいたら今後に降る雪がテラスにもっともっと流れ込み、あげくに窓が開けられなくなるだろう。スノーブーツに履き替えて、とりあえずウッドデッキの雪かきにとりかかる。「雪国のホームセンター『コメリ』」(https://inkyo-soon.com/komeri/)で紹介したコメリ白馬店で購入した道具を初めて使ってみた。あれ?これ、楽しい…。コツはすぐに体得できた。

タクシーから遠目に見えたスキー場を滑る人はそれほど多くなかった。予定通りに明日は足を運ぶことにし、スノーボードにワックスをかける。ああ、土間での作業はやっぱり気兼ねがない。そんな時だった、つれあいがスマホを見ながらつぶやく、「東京、949人だってよ…」。ワックスがけを終えたら風呂に入ってそいでもって夕食。メニューは白馬豚のロースでしゃぶしゃぶ。滞在初日の夕食は、家を温めるためにも鍋に限る。BGMはチャーリー・ミンガス。もう寝ようかというころ、室温はようやく17℃に上がっていた。

晴天に恵まれシーズンイン

目が覚めると晴れていた。日頃の行いの賜物(たまもの)に違いない。室温は一晩で11.5℃に落ちていた。薪ストーブを焚きながら、朝の用事もろもろを済ませる。朝食は昨日A-COOPで購入した篠崎恒男さんの烏骨鶏卵で卵かけご飯だ。おニューのジャケットに袖を通す。もちろんのこと、スポーツマスクだって装着する。するとどうだろう、ちょっと派手に装ったハカイダー(私が幼少のみぎりに見ていた「人造人間キカイダー」に登場するキカイダーのライバル)みたいだ。室温が16度まで上がった9時過ぎ、散種荘から歩いて2分の停留所に向かう。時間通りにシャトルバスはやって来て、雪道をゆっくり10分ほど揺られて八方尾根スキー場に到着する。ふと気づく。これは深川の庵から木場公園にウォーキングに出かける感覚に近いんじゃないの?だって結局のところ近所の広場にちょいと体を動かしに行くだけなんだもの…。ジャケットのポケットにはすでにシーズンチケットが入っているし、その他にはスマホとカメラと現金2千円しか持っていない。

「なあみんなオレってビック?」(byアラジン「完全無欠のロックンローラー」より)

シーズン初滑り、「ちゃんと覚えてるかな、滑れるかな…」毎年いつもそう思う。視界が確保できない悪天候だと、体が怖がってうまく滑れないまま一日を終えることもある。ところが「これ以上なにを望むのか」という風もない晴天。雪を被った頂きは神々しさすら纏う。好きなように言わせておいてほしいのだが、持てる技量をシーズン早々に見せつけちゃったんだ。「なあみんなオレって…」

シーズンは始まったばかりだし、混んでいたらさっさと帰ろうと思っていた。さすがにそれほど混んでもいなかったのだが、「もう充分ス」っていかんせん脚がいう。さっぱり潔く切り上げるのが「粋」ってもんさ。滞在3時間とちょっとで帰りのシャトルバスに乗った。

スキー場に「社会」の現状を見る

こんな世情だから、八方尾根スキー場は努力をしていた。それじゃあ客の方はどうかっていうと…。正直、ビックリした。防寒具をたくさん身につけるスポーツだから、マスクをしなかたっとしても口を塞ぐ方法は容易に考えつく。誰もがそうするものと思っていた。なのに、そうじゃない人がいっぱいいるんだ。その大半は日本人だ。オープンエアかもしれないが、リフトやゴンドラの乗り場は「密」になる。何が良かったのかよくわからないままなんとなく第一波が収束したように見えたとき、外国からのお世辞の質問に麻生太郎副総理が「民度が違うと言ってやった」と傲然と自慢していたことを思い出す。抑制されることのない今の感染状況、確かに「民度」が反映しているのかもしれない。政府を含めてそういうことでしょ、副総理?だからスキー場で昼食をとることは避け、マスクを外すことなくさっさと帰荘し、遅い昼食を我が家でとった。

春のような陽光、室温は13.5℃

太陽に照らされ、凍ってこびりついていた雪がゆるんでいた。これ幸いとばかりにウッドデッキの雪かきを完結させる。それを済ませて明るいうちに風呂に入る。風呂場の小さな窓から見える雪が心地いい。洗濯も済ませ、薪ストーブを焚きながらこんなものをしたためたり、本を読んだり。ビールを飲み始め、夕食の準備が始まる。室温は今…。ああ、もうすぐ隠居の身。雪山に囲まれた1日はこうして過ぎる。

投稿者

sanshu

1964年5月、東京は隅田川の東側ほとりに生まれる。何度か転宅するが、南下しながらいつだって隅田川の東側ほとり、現在は深川に居を構える。「四捨五入したら60歳」を機に、「今日の隠居像」を確立するべく修行を始め、2020年夏、フライングして「定年退職」を果たし白馬に念願の別宅「散種荘」を構える。ヌケがよくカッコいい「隠居」とは? 日々、書き散らしながら模索が続く。 そんな徒然をご覧くださるのであれば、トップにある「もうすぐ隠居の身」というロゴをクリックしてみてください。加えて、ホーム画面の青地に白抜き「What am I trying to be?」をクリックするとアーカイブページにも飛べます。また、公開を希望されないコメントを寄せてくださる場合、「非公開希望」とご明記ください。

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